原くんとお兄さん








前々から薄々思ってはいたんだけどさ、


「……なぁ、あっくん」
「なぁに〜兄ちゃん」


うちの弟、ちょっとお菓子食べ過ぎじゃあないですか……?

……え?今更?
あ、そうですか……すみません……。

よく食べるしよく寝るし、大きくなるなーって昔は済ませていたんですよ……。それがいけなかったのか……はぁ……。


「あっくん、ちょっとお菓子食べ過ぎじゃない?」
「えーそんなことないよ〜。ねー室ちん」


急に振られて、瞬間辰也がピシリと固まる。いつもの笑顔のままで。
なぜ、俺に降ったと言いたげな雰囲気を若干醸しているが、まぁ、仕方ないじゃないか。ここにいるのは、俺、あっくん、辰也の3人なのだから。

ちなみに今は、あっくんの強い希望で、都内のとあるパフェ専門店に来ている。東京に行った時に絶対行こうと決めていたらしい。
パフェ専門店、というところからもわかるように、女性客がとても多い。たまに、5,6人の男性グループ客が入ってくる以外は。たまに、とつけることができるのは、かれこれここに3時間ほど滞在しているため。
なぜ長時間に渡って……というのは、言わずもがなであろう。

俺も甘いものには目がない方だが、さすがに大きいパフェを何個も食べるほどではない。さすがに胸焼けする。
辰也はそう甘いものが得意ではないみたいで、小振りでシンプルなパフェを頼んだ後は、ずっと珈琲を飲んでいる。
そして、あっくんはというと、4人前とメニューに書かれたパフェ食べている。現在2つ目半ば。


「室ちん?」
「あ、あぁ。……んー、そうだな。確かに麗さんの言う通り、少し食べ過ぎかもしれないな」
「えー室ちんまでー」


眉間に皺を寄せながら、別にそんなに食べてねーじゃん、なんて言っているが、いやいや、かなりの量だぞそれ?

大きな器の底には、まずイチゴのムースがたっぷりと敷かれていて、その上にイチゴのジェル、再びムース、淡いピンク色をしたスポンジケーキ、生クリーム、コーンフレーク、イチゴ風味の生クリーム……等々、イチゴ尽くしのパフェである。パフェ上部に刺されたポッキーのようなそれも、イチゴチョコのであり、それから、イチゴがこれでもかというくらいに敷き詰められている。

イチゴ、美味しいよな。じゃなくて、


「あっくんが幸せそうに食べているのを見ているのは好きなんだけどなぁ。……そうだ、辰也」
「なにか?」
「あっくんさ、まだコートの中でお菓子食べてるかい……?」
「あー……」


数秒置いて、辰也は苦笑した。
それを見て私は、顔の前でパンッと掌を合わせた。


「……申し訳ない」
「ははっ。まぁ、仕方ないですよ」
「昔から注意していたんだけどなぁ……中学の頃も征や真太郎に散々言われていたと聞いたんだが、やっぱり直ってなかったかぁ……」
「だってお腹すくんだもん」


辰也に聞くと、毎回お菓子を持ち込んで食べては雅子さんに怒られているらしい。

今度日本酒でも送るか……。


「辰也、今度雅子さんに好きな銘柄聞いておいてくれるか」
「いいですよ」
「頼んだ。……そうだ、辰也、お前は何が好きだ?」
「え?」
「敦が随分と世話になっているからな」
「大丈夫ですよ」
「で、何が好きだ?」


強引だと苦笑する辰也に、あっくんが一言。


「室ちん、兄ちゃん一回言ったら引かないし、遠慮せずに頼んじゃえばいいよ」


そういうこと。


「さぁさぁ、何をお望みだね辰也」
「うーん……」


どうしようかなぁと少々困惑したように言う辰也を見ながら俺は意地の悪そうな笑みを浮かべた。




これからも敦をよろしく頼んだよ、辰也。





(2015/04/04更新)


むっくん兄のときは、室ちんと兄弟同然の付き合いをしているといいなっていうところから。
お兄さん、甘やかしたい相手は全力で甘やかしにかかります、きっと。
室ちんはきっとそういうのに慣れていないから、戸惑いながらも嬉しく思ってくれているといいですね。
あ、そんなお話書きたい……(笑)











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