XANXUSの隣で誕生日を迎えた。時計が0時を知らせた瞬間、先程まで書類と向き合いオレに気を遣うそぶりすら見せなかった男が席を立ち、部屋を出て、帰ってきたら小さなブーケを手にしていた。


「Buon Compleanno.」


小さな間のあとに、思わず笑ってしまう。嬉しさと気恥ずかしさ。もう誕生日を祝う年齢ではないというのに――毎年何の準備も感じさせないまま日を跨いでも、いつの間に準備したのかわからないプレゼントは欠かさないのだ。
目を覚ましてから、毎年欠かさないプレゼント。


「……オレに花かぁ?」
「嫌いか」
「いや、ただ…」


ただ――切った言葉。XANXUSは続きを待つように沈黙してはこちらを見て。ブーケに視線を落とした。受け取れ、と暗に言っているように花を胸元に押し付けて来る。


「ただ――ロマンチストだなぁって」
「お前には負ける」
「そうかぁ?」
「願掛けで髪を10年以上伸ばすような奴がロマンチストじゃないわけねーだろ」


それもそうだ。
惚れた男に夢を見た時点で、ロマンチストなのだろう。そして髪を切らないのも。


「ああ……サンキュなぁ」


でも、でもそれは、お前がオレを夢中にさせ続けているせいだ。
その紅い目を見て、いろんなことを想像してしまうのも。紅を見るとお前に繋げてしまうのも。

朝、お前の姿を目に焼き付けて。
昼間は青すぎる深すぎる遠い空を見てお前の事を考える。
黄昏時は地平線に融けていく夕日にお前の目を重ねるし。
宵闇には仕事するお前の姿を思い出すのだ。
一日中、お前がいなければ成り立たない。

ブーケを受け取り、鼻孔の匂いに目を閉じた。


「欲しいものは?」


それも、毎年の問答だ。
オレは毎年「これで十分だぁ」と返すけど。
今年はねだってみようか。


「心を込めた言葉をくれぇ」


最高級のTi amoを。


3月13日、心を忘れないで
(今年のお前は欲張りだな)(いいだろぉ?年一くらい言ってくれても)(……耳をかせ)((………))



朝一に耳がとけるかと思った。


20130313(Title:反転コンタクトさま).

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