男の子は空豆餡。
女の子は桜餡。
幼稚園で先生が作ってくれた柏餅の中身の話である。


「あめ、かしわもちおいしいか?」
「うん、おいしい」


幸せそうに柏餅をほおばる大好きな女の子が目の前にいるだけで幸せだった。こちらも自然に笑顔になる。よかったな、と頭をなでなでして隣に座れば、例年より気温が低いせいか少しだけ肌寒そうに雨が距離を詰めて肩が当たった。


「レナートくんのもおいしい?」


俺が一口食べて中身が見えた緑色の餡に興味深そうに見ていたから、口元に持って行ってやる。


「おいしい」
「!…」
「たべていいよ」
「け、けど…」
「けど?」


ちらりと周りを見てからこしょこしょと耳元に唇を寄せて囁く。


「かんせつちゅうになるけどレナートくんイヤじゃない?」


口が離れたので雨の方を見て、クスクス笑ってから雨の手にある桜餡の詰まった柏餅にかぶりついてひとくち分飲み込んでからお返しとばかりに耳元に。


「あめはいやか?」


かあぁぁ、雨のほっぺたが熟したリンゴのように真っ赤になって、漸く口元にやった空豆餡の柏餅を頬張った。
イヤじゃない、とつぶやいてマシュマロのように白くて柔らかい手がズボンを掴んだから、オレの手で上から覆ったら皆に聞こえないようにまた耳元で「だいすき」と呟いた。返す言葉はいつも通り。「オレもだ」。



幸せの温度調節
(いつでも高温注意報)


(まあ勿論レナートと雨がいちゃつく風景もいつものことなので内緒話の意味はない。好きなのかと個別でからかおうとした者も居たが、二人は異口同音に「好きだ」と答えるのでいつしかからかうものはいなくなった園内の公認カップルである。)


20130505(title:反転コンタクトさま).

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