数歩歩いて、しゃがむ。
数歩歩いて、しゃがむ。

そんなことをなんかいもくり返している幹部にちかづいてすりよる。


なにしてるの?幹部


すんすん鼻を鳴らしたら、幹部がたてがみをなでてくれた。小さいてはとても柔らかくて、10年ごはちのにおいがするけど、今はわかくさと土のにおいと、ちのみごのにおいがすこしのこるにおいがする。


「今、バルタンを散歩させてる!」


幹部が指さした先を見たら、まっかなはさみをふりあげた何かがぜんかいにこっちに手をふっている。
ぴーすさいんだ。
ゆうこうてきなやつなのかもしれない。


幹部はさきイカを「バルタン」の前にひょこひょこさせてついばませた。
バルタンはかんじょうのよめない目でさきイカをほおばっている。
おいしい?首をかしげて幹部が手をだしたら、バルタンがさきイカを放り出して幹部のゆびさきをはさんだ!!


「わぁああん!!いたいいたいはなしてぇええ!!ばるたんいたいぃい!!」


ぶわっ。
頭に血がのぼって、幹部を痛がらせたばるたんにかみつく。
パキン。
からがわれるおとがして、バルタンが動かなくなったので幹部の指から引きはがしてバルタンを置いてから赤くなった幹部のゆびをなめようとしたら、火がついたように泣き出した。

いたいのもう終わったよ、すりすりとほおをよせたけど、幹部はまだ泣いている。


「ひっく、…うえっ、べ、ベスターがバルタンたべちゃった…」


ああ、と。
動かなくなったバルタンを見下ろす。
だってバルタンは、幹部にいたい思いをさせたのだ。
ないてほしくなかったからてをだしたけど、よけいに泣かせてしまった。

ごめんね。
なきやんで、なきやんで。
真っ赤なほおをなでるなみだをなめる。
とてもしょっぱかった。


「ベスターのばかぁあ」


たくさん涙をおとす幹部に、ぎゅうううっ、むねのあたりがいたくなった。


*


「?ベスター」


丸くなって唸っているベスターの頭をなでてやれば、ベスターはちらとこっちを見てからまたふさぎこんだ。
匣から出してやるとだいたい幹部に構って遊んでるくせに今日は具合でも悪いのか?と外を見たら幹部がシャベル片手に泥だらけになりながら泥山を作っていた。泥山っつーか砂場レベルじゃない軽い丘のレベルまで達している。あの小さな体でよくもまぁあれだけの土を掘り返せるもんだな、と思えばアイス棒みたいなものを真ん中に突き立てて手を合わせている。


「なにしてんだあいつ…」

大人が三人くらい寝ても大丈夫そうな規模の丘を見てまさかと思う。


「庭に人を埋めるんじゃねぇええ!!」


ベスターがようやく起きて窓辺で怒号をあげたオレのシャツの裾を引っ張った。
ま、まさかお前も片棒担いだのか!!!


「人じゃないよ!バルタンだよ!!」


宇宙人か!!!
いやまて、人間も問題だが宇宙人庭に埋葬されてもミステリーサークルとか出来そうだ!!!
つーかバルタン星人しとめるとかどんだけたくましいガキなんだ!!!
ふんふんと鼻を鳴らしてそーっと窓の下を見たベスター。幹部がふりかえったとおもったら、ぴゃっと逃げてしまった。

おい待て、百獣の王がガキに逃げ出すんじゃねぇよ!
は!!!まさかベスターが脅えるほどおぞましくバルタン星人を責め立てたって言うのか!?


「……」


幹部が、ベスターそっちにいる?と聞いてきたのでちらりとベスターに視線を向ければふさぎこんでいたからいないと答えれば、今度はタモ片手に出かけていった。
忙しいガキだ。


「ベスター」

「……」


ぴくんっ。
しっぽを揺らしたので聞いてはいるようだ。


「ガキが一人で出かけるぞ。いかねぇのか?」


気にしない風を装っているが、耳をピコピコしていて気になるのがモロバレだ。


「ここの所物騒だから帰ってこねぇかもな」


唸りだしたので気になってるなら行けよと促すが、伏せの体勢のまま動かない。

何したんだあいつ


*


夕方になって、幹部がタモとバケツ片手に帰ってきた。今度は何捕まえてきたんだ、と覗き込めばぎっしり赤い生き物が蠢いていて背筋を怖気が走る。
待て、また飼うとか言い出すのか。
この前うなぎ捕まえてきてさちとだいきち食うかもしれないっていう会議の結果新しい水槽増やして高級熱帯魚と金魚二匹にうなぎ一匹とか言うカオスが部屋の片隅に形成されてるって言うのにまだカオス要素を足そうってのか?

つーかなぜ水辺の生き物ばかり増やす?

ペットはせめて毛のある生き物にしろと言ったら毛ガニ捕まえてくる始末。
ちげぇよ!!!
そう言う意味じゃねぇだろ!!!


「それを持ってあがってくんな!!!」

「わかった!!」


下の階からバケツぶん投げられて赤いものが数匹飛び散って悲鳴を上げた。違う!持ってあがってくるなって言うのは置いてこいって意味で決してそいつを先にあげろって意味じゃぎゃああああ!!!


窓から入ってきたバケツとザリガニが!!部屋の中にぶちまけられて一人阿鼻叫喚。


椅子の上に避難して怯えていれば、幹部があがってきてベスターに抱きついて、「バルタン捕まえてきた!!」バルタンってザリガニか!!!カス!!



「さっきは助けてくれたのにごめんね、ベスター」



ぴこん!ベスターが漸く立ち上がって幹部を押しつぶしてべろんべろんなめている。待て、その前にオレを助けろっつーか マジで何があった。


「ごめんね、ありがとう」


べろんべろん唾液まみれでにこにこしている幹部。一人と一匹にオレはふるえながら早く何とかしろ!!!と叫んだが暫く放置された。



20140128.


ひさびさにちび幹部ちゃん書こうとしたらなんだこれ←





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