突きつけられた言葉に立ちすくむ(ルームシェアXS)
ごーん

ごーん



煩悩をかき消すと言われる鐘が鳴り響く。
普段煩悩どころか生きるのに必要なものまで消し飛びそうなほど頭蓋骨を殴られたりしているオレからすればあんな音の一つや二つで煩悩なんて言うものが消えるなんてことは思わない。
が、年末も今日も今日とて寝たり参考書を開いたりしているXANXUSが初詣に行くかと言い出したので、もとより雑煮もあきたしおせちも完成させたし暇だなぁと思っていたので我が意を得たりとばかりに起き上がり防寒具を着けてXANXUSを急かした。


大学に入り、地元が一緒でルールシェアでもするかという話になり気心しれない奴と暮らすのはごめん被るが、こいつとなら暮らしてぇなぁと思う片思い相手が承諾してくれたのだ。是非もなかった。
日常生活でも血の気が多かったり家のことは何もしねぇし出来ねぇしって奴なのだが、こいつの面倒を見るのは嫌いじゃない。

ルームシェアはうまくいきづらいなんて話だが、世話焼いているのは楽しかった。なんだかんだ年末まで持ち込めたし一緒に年越しイベントも楽しめるなんて願ったりだ。

何より普段外出なんてものを嫌がるXANXUSが自ら誘ってくれたのは年末ながら今年一番の思い出と残しておこうと思う。



「すげぇ人」



神社に入る前からうんざりしたような声を上げた男の隣でくつりと笑う。こいつは人嫌いだからなぁ。
しかしながらここまで来て帰す気はない、と神社に踏み込む。



「くじひいて御守りでも買うかぁ?」

「いい。さっさと賽銭投げて鐘ならして帰りてぇ寒い」

「仕方ねぇなぁ」



巻いていたマフラーをXANXUSの首に巻いてやり肩を寄せる。人肌嫌いの男からすれば少しオレの体温が残っていて気持ち悪いかもしれないがそれくらいは我慢してもらわねば。



「ん。これで少し我慢してろぉ」

「………」



眉を寄せたから、やはりオレの体温が不愉快なのかもしれない。
男に片思いしたのが悪いかもしれねぇけど報われない初恋してるなぁ、と息をつく。吐いた息が白く広がって寒空に溶ける。

恋なんてそんなものだと諭すように。
それでも今はこの不安定で報われない恋に、身を任せていたいのだとも本能が告げている。

オレは本能には逆らえないと自覚もしている。



「寒いとか言いながらそんなに必死に願いたいことでもあんのかぁ?」

「……ひとつな」



こいつが一つだけ願いたいこと、か。
いったいなんだろうと考えようとして、やめた。

将来のことだろう。
今が幸せなオレに、来て欲しくないものなんだろうと思う。



「叶うと良いなぁ」



それでもおくびにも出さず口にした言葉はなんとも。



「叶えるに決まってるだろ。俺を誰だと思ってる」

「はッ、だよなぁ」



自信家で傲慢で、でも実力も折り紙付き。単純な事で怒り出す王様なのだ。
カミサマなんかに宣言しなくとも自力でかなえるだろう。
その願いが叶うときも側にいれたら、なんてくだらないことを考えてしまった。

未来予想図にオレの姿があったらいい。そうだ、オレはそれでも頼んどくかなぁ。

なあ、カミサマ。都合のいいときだけ拝むけど、聞いてくれるだろうか。


さっさと足を進めて賽銭箱の最前列、5円玉を投げ入れて手を合わせる。





「こいつとずっと一緒にいられますように」



報われない恋のはずだった。
かなわない恋のはずだった。

しかし耳をすり抜けた言葉は。



「願ったぞ」


腕を引かれて




「叶えろよ」



胸に飛び込めば。
さっきまで普通にみれたはずなのに、XANXUSの顔を見上げられなくなる。




叶えろと年越しに突きつけられた言葉は世界一欲しかったものだった。


20131205.


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渡季


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