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ユーリ・ローウェルが純血の吸血鬼(ヴァンパイア)ルークと共同生活を始めて三カ月が過ぎた。
生活を始めてまず困ったことはルークには生活能力がほとんどないということだった。一応屋敷で暮らしていた経験はあるものの、ほとんどのことは兄がやっていたらしい。どんだけ甘やかしてんだよ、と思いはしたが、とにかく必要最低限のことは覚えさせようと、ユーリにしてはかなり根気強く教え続けた結果、身の回りの掃除や洗濯くらいはできるようになった。今は目下、食べることのできる料理を作らせることが目標だ。ユーリとて四六時中部屋にいるわけではないのだ。ハンター協会に属しておらずとも賞金稼ぎくらいはできるし、護衛警護を頼まれることもあるので、外にいることが大半だ。ここ三カ月はルークのために仕事を控えていたが、そろそろ大丈夫かと区切りをつけたいのだ。


「えーと塩を振るの?」

「それは砂糖。甘くしてどーすんだよ」

「あれ、そうだっけ」

「だから、分かんなかったら舐めて確認しろって言ってるだろ」

「うぅ……ユーリ、厳しい」

「当たり前だ。これまでどんだけ食材無駄にしてきたと思ってんだ。とにかくお前は食える料理を作れるようになれ」

「は、はぁい……」


うなだれるルークを見ながらユーリはため息を吐いた。最初はかなり楽観していたが、掃除洗濯はどうにかなっても、料理の味は壊滅的で、いや、友人に比べればかなりマシだが。いつなればまともな料理が作れるのか、予想がつかない。
結局今日も失敗が続き、ユーリが作ることになった。ルークが小さくごめんなさいと呟くのを聞きながらユーリはただぽんぽんとルークの頭を撫でた。


「まあ仕方ない。どっちにしても明日は一日居ねえから作り置きしとく。夜には戻るから良い子にしてろよ?」

「うん、分かった。外に出ないで部屋の中で大人しくしてる」

「そうしてくれると助かる」

「ユーリ、ハンターだもんな。協会にバレたら大事だ」

「ん、悪いな」

「いい、仕方ないから」


そうは言っても複雑な気持ちだ。ユーリとしては外に自由に出してやりたいと思うのだが、如何せん住んでいる場所がよくない。何せ協会のお膝元。協会に属していなくても、ハンターをするには都合の良い住まいなのだが、ルークには住み難い場所だ。朱い髪の毛に碧の瞳とくれば純血の吸血鬼と分かってしまう。迂闊に外に出してハンターたちに追われないとも限らない。
出来上がった料理を皿に盛り付け、ダイニングテーブルに置くと、ルークは目をきらきらさせて料理を見つめた。変食の気があるこの吸血鬼の大好物、エビとチキンを使った料理に夢中らしい。


「ユーリ、ユーリ、食べて良い?」


ユーリはくらりと目眩がした。無邪気なくせに無駄にフェロモン撒き散らすから、こっちは毎日気が気じゃない。


「もう少し待て」


そう言うと見る間にしょぼくれる。苦笑しながらユーリは最後の皿をテーブルに置いて椅子に座った。相変わらずしょぼくれるルークを見やる。


「ルーク」


呼んでやるとぱっと目を輝かせて手を合わせた。頷いてユーリも同じように手を合わせていただきますと言う。
食べ始めたルークは優雅な所作で料理を口に運んでいる。この辺りはさすがと言うべきか。おそらく兄とやらが恥をかかぬようにと教え込んだのだろう。


「美味しい!」


ああ本当にどうしてくれよう。優雅に見えて、結局口端にソースが付いているじゃないか。ユーリはため息一つ吐くとハンカチでルークの口端を拭いてやった。
こんな調子で本当に大丈夫なのだろうか。とにかく明日は早めに帰って来ようと心に決めるのだった。










Congratulations!
Tea Praty in Nagoya!


(これじゃあ過保護にもなってしまうじゃないか)
あしたきみに出逢えたら










――――――――――
ユリルクお茶会in名古屋開催、おめでとうございます!

タイトルと内容が違うなあ……ご、ごめんなさい、土下座。
もっと精進します……。
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