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作品保管庫 | ナノ
※学パロのさらに別ver。先輩後輩の関係です。
彼女の可愛さについて語れと言われたら、語りきれないくらい可愛いとユーリ・ローウェルは答える。好きで好きでどうしようもなくて、たまに友人は呆れたようにため息を吐くが、それは友人に恋人がいないからだということにしておく。
「ユーリ、お待たせ! 今日はどこに連れて行ってくれるの?」
「秘密。言ったらサプライズにならないだろ」
「珍しいね、ユーリがサプライズなんて」
「まあな。たまにはいいだろ、こういうのもさ」
「うん、楽しみにしてる!」
今日はクリスマスだ。一年前、五年越しの片思いを叶えて、今隣を歩いているルーク・ファブレとお付き合いをしている。朱金の長い髪の毛を三つ編みにして、翡翠の瞳はきらきらしてとても綺麗だ。そっと手を絡ませて握ればぎゅっと握り返されてユーリは微笑んだ。キスもその先の触れ合いもきちんと手順を踏んでいるけれど、こんな些細なことだけで幸せな気持ちになれてしまうのだから、少し安上がりかなとも思うけれど。ルークもふにゃりと笑ってくれるからそんなものは気にならない。
キムラスカから電車を経由してファブレの所有の遊園地までそれほど時間はかからない。遊園地の入り口でルークはきょとんとした。
「遊園地? しかもウチが経営してるとこだね」
「ああ、親父さんに頼んでフリーパス手配してもらった」
「父さまが? 珍しい。ユーリのこと、あんまり好きじゃないみたいだったのに」
クリスマスのフリーパスは希少価値が高く、毎年なかなか予約が取れないことで有名なのだ。
「ははは、嫌われまくってるのは自覚あるから、あんま言わないでくれ」
「大丈夫、俺はユーリのこと好きだから。カケオチするなら準備するけど」
話がぶっ飛んだ。しかもカケオチなんて言葉、誰から聞いたんだろうか。ああ、最近のドラマや漫画から知識を得たのか。
「違うよ。母さまから聞いたんだ。父さま、母さまとの結婚を認めてもらえなかったらカケオチするつもりだったんだって」
すごいよね、と笑っているルークはおそらくカケオチの何たるかを理解していない。が、それも悪くないかとも思う自分はきっとどうかしている。
チケットを二枚、係員に渡すとあらかじめ用意されていたであろうブレスレット型のフリーパスが腕にかけられる。ごゆっくらどうぞ、と声をかけられながらゲートを通ると、やはりクリスマスなだけあって人でごった返している。
「相変わらずクリスマスは人が多いな。前にバイトしてた頃と全然変わんねえし」
「まあねえ、イベント企画があって、しかも毎年違うから、それを楽しみに来てる人もいるみたいだ」
「主にカップルがな」
「俺とユーリもカップルだよ?」
「そーでした」
わざと茶化して言うとルークは面白そうに笑った。不思議だ、ルークが笑うと世界が変わって見えてくる。恋愛をしていると盲目になると言うが、まったくその通りだと思う。己が彼女にこんなにも溺れる日が来るなど、予想もしていなかった。
ユーリはルークの手を引いて歩き出すとまずメリーゴーランドに行った。次はミラーハウス。食事を挟んで、空中ブランコにジェットコースター。ユーリが少し気持ち悪そう。最後に観覧車。
「大丈夫?」
「大丈夫だっつーの」
と、強気に言ったが気持ち悪い。まさかルークが絶叫系に強いとは思ってなかった。男のくせに絶叫系が苦手だとか、あまり知られたくなかったが、ルークは楽しそうなので良しとする。
そうして他愛もなく会話を続けて、自分たちの乗っている観覧車が頂点に差し掛かると同時に花火が打ち上がった。ルークの瞳が輝くのが分かる。
「綺麗……でも、あれ? 花火なんてイベントプログラムにあったっけ?」
「これが親父さんのセッティングしてくれたサプライズ。今日は特別だってさ」
「ふふ、ユーリの手柄じゃないんだね」
「悪いな」
「いいよ。ユーリとデートできたから。一緒にいて、一緒の気持ちを共有できたことがすごく嬉しい」
ふにゃりと笑いかけられて頭がくらくらする。誘われるようにユーリはルークに口づけた。一瞬驚いた顔をしたけれど、ルークは瞳を閉じてユーリの首に腕を回した。
「ん、これも、サプライズ……?」
「サプライズってほどのことじゃないけどな」
囁くように言ってまた口づける。チュッというリップ音とともに二人の唇が離れた頃、下に戻ってきた。まるで夢の中にでもいたかのような浮遊感がまだある。ユーリとルークは微笑み合って、また手をつなぐと今度は家路への道のりを歩き始めた。
(君の可愛さは規格外だから語れない)
可愛い君を愛する理由
Congratulations!
Xmas tea party in Tokyo!
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Xmasオフ会in東京記念に書いてみた。
別に何てことは無いデート風景、だと思う。
デート自体あまりしたことなくてよく分からん、苦笑。