初詣でははぐれないように。
冬休みにはいって、講習やクリスマスも終わり、気がつけばもう一月だった。
新年明けましておめでとうございます!
そんなわけで、今日一月一日は薄桜荘のみなさんと初詣にきている。
「ったく、人が多くてやってらんねぇな」
「千鶴ー、はぐれんなよ」
「赤坂もいるな?」
背の高い原田さんや天霧さんがいらっしゃるから、そうそう迷子にはならなくてすむ。背が高いって羨ましい。
千鶴ちゃんと平助くんはいつの間にかそんな感じになって、手をつないだりしているし。うーむ、私が一番危険だな。まずこの神社の全体把握してないし。
「また人が増えたようだな…」
「赤坂、はぐれ…?」
「どうした斎藤?」
「いや。…赤坂が、いない、です」
「なに!?」
「…流された」
一瞬、目の前の斎藤君から目を離した隙に人波に流されてあっという間にみなさんを見失ってしまった。
原田さんや天霧さんも見当たらないものだから困りました。
「まあ、お賽銭いれて…あ、千鶴ちゃんに電話すればいっか」
ダウンのポケットから携帯を取り出して雪村千鶴を呼び出す。
………出ない。
やっぱり人が多いから気がつかないのかな。
諦めて歩き出すことにした。いずれ見つかるだろうといういい加減な感じで。
「斎藤君探してきなよ」
「別にいいんですが、なんで俺が」
「だって斎藤君……」
誰も見あたらない。
お賽銭をいれておみくじひいて、絵馬も書いたのに誰も見つけられなかった。
人混みをぬけて、このまま帰ってしまおうかと思いながら石段を下っていると、上段から足音が聞こえた。
「赤坂!!」
「あれ?!」
振り返ると、相変わらずオシャレな斎藤君がいた。ジーンズにマフラーがよく似合う。ピーコートが似合う男の子っていいな。
黒い癖っ毛があちこち寝癖みたいに跳ねていた。
「斎藤君?どうしたの?」
「どうしたもこうしたも…赤坂を探して、」
「あ、紫苑ちゃーん!」
「ふえ?」
斎藤君に遅れて、ぱらぱらと薄桜荘のみなさんが現れた。
「心配したよ!」
「迷惑かけないでよね」
「お前探してねぇだろ」
賑やかなみんなの声が、とても温かくて。
「さあ、帰りましょうか」
今年も楽しい年になればいいなって。
「…紫苑?」
「…あれ」
実家に里帰り…あれ?
してないよね、私。実家に、帰ってないよね?
「紫苑!!…ああ、近藤さん」
「む?」
「お世話になっています。赤坂紫苑の親です」
予想外すぎる一年が幕を開けた。
『お、親ぁっ!!?』
(紫苑ちゃん、ほんとに?!)(えー!?なんでいるの?!)(ほんとなんだ…)(とりあえず、薄桜荘へどうぞ!)(えっ、来るの?!)