薄桜荘へようこそ! | ナノ

宿題は早めに終わらせよう。


赤坂紫苑、夏休み終了三日前にして大ピンチ。





「課題が終わっていない?」

「はい…」

「…ひとつ言わせてもらうが」


赤坂、馬鹿か?
と斎藤君。ごめんなさい、自分でもよくわかってるつもりです。
そう。夏休み最後の三日間。夏休み最終日は、夜に薄桜荘のみなさんで花火をすることになっていて、実質活動できるのは今日も含めてあと二日。そんななか、千鶴ちゃんが学校の準備をしているのを見て、宿題が全部終わっていないことに気がついた。


「ちなみに、何が残っている?」

「数学のワークと化学のプリント、英語の課題とレポート」

「…ワーク類は、まさか一ページも手を着けていないのか?」

「え、いや、四、五ページは…やった…よ」

「はあ…。それで、赤坂は俺のところへ来て何がしたいと」

「宿題見せてくだ」「断る」


断られた。予想はしていたけど、斎藤君にしてはかなり素早く断った。かぶせるように断られた。…なんか、ちょっと切ないかも。
私が悪いのはわかってるの!わかっててお願いしてるの!


「自分でやれ」

「そんな!せめて解らないところだけでも教えてください!」

「全部はなしだぞ」

「うっ…」


近頃、斎藤君はもしかしてエスパーじゃないかと思うようになった。


「…手伝ってやるから、自分で考えろ、紫苑」

ぽむ、と軽く頭を撫でられる。


「…あれ?斎藤君、いま、紫苑って…?」


違和感があるようでないのはどうしてなんだろう。





「だから、どうしてこうなるの?」

「こういう公式なんだ。nに3をいれるとこうなるんだから、」


化学、英語は、なんとか徹夜気味に一日で終わらせた。ほとんどが自分でできたので、斎藤君に「なぜ残っていたんだ」と呆れられてしまった。
問題は数学で、明後日には夏休みが終わってしまうのに、半分以上もページが残っている。斎藤君が教科書を片手に教えてくれるけど、何がなにやらよくわからない。テスト前に教えてもらったはずなんだけれど…。


「…俺はあんたにこの範囲を教えた記憶があるんだが?」

「ごめんなさい教えていただきました」


斎藤君の小言が飛んでくる前に、問題と向き合う。数学Vともなると手強いもので、どちらかといえば理系な私もちょっと手が着けられない。数学はそもそも苦手教科で、やっとなれてきた頃なのだ。


「そうだな…。一度、この例題を解いてみろ」

「はい」


斎藤君の教え方はとても上手なんだけど…私が駄目なんだなぁ、なんて思いながらシャーペンをくるりと回すと、斎藤君に「赤坂」と注意された。
結局、昨日のあれ以来斎藤君には「紫苑」と呼ばれていない。なんだか名残惜しいというか、そんな気もするけれど、斎藤君に言えるわけもないので黙っている。


「…できましたー」

「…できている。つまりこの解き方なんだが?」

「…えっ、そうなの?」

「ああ」


なんだ、そうだったんだと問題にとりかかると、正面で斎藤君がくすりと笑うのが聞こえた。なんだか照れくさかったので、ワークとにらめっこし続けた。







「紫苑、今日中には終わるな?」

(うん、大丈夫だと思う…あれ?)(どうかしたか?)(え、いや、いま斎藤君、紫苑、って…)(あ、ああ、そういえば藤堂の様子を見てこなければ!)



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