立海 | ナノ

ただ一言、おめでとう

難病にその身を蝕まれていたから仕方なかろうと真田はいつも口を尖らせて言うけれど、やはり今まで真田に苦労をかけてきたことはずっと気にはしていた。真田はあんな性格だから弱いところなんて1度も他人に見せたことなどない。テニス部の中では付き合いの一番長い俺にも仲の良い柳にも、もちろん柳生やジャッカルや仁王に丸井、それに赤也にだってだ。俺が入院し、副部長として代わりを勤めていた時も慣れないだろう部長業に不満も不安も何も言わなかった。たぶん俺に心配をかけさせたくなかったのだろう。お前は自分の身体の事だけを心配していろ、と真田は見舞いに来るたびに言った。
 綺麗な文字が羅列する部誌には事細かにその日あった出来事が書き込まれていた。それでも足りない部分は真田が身振り手振りで説明してくれた。柳と話し合って決めるというメニューに目を通して、筋トレをもうちょっと減らしてみたら?とかその代わりに外周を増やしてみようよとか軽い気持ちで提案すると真田はそうか、では次からはそうすることにしようと頷いた。俺が入院してから真田は携帯電話を持つようになった。使わなくなった兄の携帯電話で譲り受けたのだという。練習試合や高等部との合同練習が終わるたび逐一連絡をくれた。ねえ真田。本当は不安だったんだろ?心配だったんだろ?自分が俺の代わりをちゃんと勤められているかどうか気にしてたんだろ?そうじゃないとお前は俺が口にした練習メニューの提案を鵜呑みにしたりしなかったよ。携帯なんて勉強とテニスの邪魔になるようなもの持ったりしないはずさ。部誌だって本当は柳がいつも書いてるのに、それをわざわざ真田が書く必要なんてこれっぽっちもないんだから。真田はいつもいつも心配するな心配するなって俺に言っていたけれど、逆にその言葉をかけられるたびに俺は心配になったよ。真田も疲労で倒れちゃうんじゃないかって思ってね。本当だよ?
 弱さを見せろとまでは言わないけど、もう少し頼ってほしいな。そうやって自分に厳しいのは良いと思うけど、まあ、ほどほどにね?

「…とまあ、言いたいことはいろいろあるんだけどさ!」
「まだあるのか」

飽きれ顔でこちらを見ている真田に満面の笑顔で頷いたら、ため息をつかれた。人がせっかく心配してあげてるのに失礼な奴め!こうなったらお望みどおりとことん言ってやろうじゃないか。でもその前に。

「真田、誕生日おめでとう」

どんなに言葉を連ねても結局はこの一言に行き着いてしまう。やっぱり愚痴を言うのはまた今度にしよう。だって今日は真田の誕生日なのだから。











真田Happy birthday!
この後の焼肉パーティーで盛大に皆から祝われてね!
皇帝に花束を様に提出させてもらいました!ありがとうございました!


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