オレンジ色の憎いやつ



※伊佐奈さんがビッチ


「やあ、おかえり椎名。お風呂にする?人参にする?それともオ・レ?」

ある日の夕刻ワシが園長室に戻ると、白いエプロンを身に着けた恋人の伊佐奈が待っていましたと言わんばかりに駆け寄ってきた。
上にいつもの黒スーツ一式は見に付けておらず、ひらひらした丈の短いエプロンの下からきわどい具合に白い生足が見え隠れしている。
――ぐおおおおおなんのサービスじゃコレエエエエ!?
こいつ絶対パンツ穿いてないぞとワシはそのとき確信した。
予想はしていた。元来ヤンデレ気質の伊佐奈のことだから遅かれ早かれ常軌を逸した行動をとってくるかもしれないと危惧していたが、いざ実際に体験してみると身が持ちそうにない。
ワシは理性に反してかっと火照る顔を手で覆い、だらしなく開ききった口元を無理矢理キッと引き締めようとした。とりあえず飯と風呂くらいは済ませてからじゃないと。

「な、おっ、お主なわけないじゃろこのキチガイ。いいか、ワシは先に風呂だ…!」

「そうか。じゃあ俺が背中流してやる」

息子を自重させて逃げるようにバスルームへ向かおうとしたにもかかわらず、伊佐奈が当然のように後をついてくるので、ワシは気分を改めくるりと踵を返した。

「あ、すいませんやっぱ人参に変更とかできます?」

「……俺は?」

「えっ」

ワシはまじまじと相手を見た。
伊佐奈の淀んだ黒い瞳はこころなしか潤んでいる。

「なあ椎名、俺のことは選んでくれないのか?待っていたのに」

「う、何の話を…って伊佐奈お前、アーッ!!」

待てと抑止をかける前に背後からばさりと抱きつかれ、ワシは勢い余ってそのまま頭からフローリングに倒れこんだ。

「!?」

太腿に猛った固い熱が押し当てられ、ぞくりと身体が震える。
うつぶせに転がったワシの上にのしかかる伊佐奈はとりたてて重いというわけでもないが、別の意味で色々と危険だった。

「…椎名は、俺より人参の方がいいのか?」

慌てて身体をあお向けにして振り返ると、案の定伊佐奈が両手でワシの腰に腕を回したままズボンに局部を擦りつけていた。不自然に隆起したエプロンの前は濡れていて、下にある伊佐奈のものが透けて見える。

「俺はこんなに椎名が好きなのに…むかつく、」

伊佐奈は不機嫌な顔のままそう言うと、大きめのエプロンのポケットから派手な棒状のものを取り出した。

「あ、人参!」

「ああ、そうさ。いいか、こんなもの、こうしてやる…!」

ワシが人参をかっさらうより早く、伊佐奈は意外に俊敏な動作でそれを後ろに遠ざけた。ワシに覆いかぶさるようにのしかかった身体を僅かに浮かせ、突き出した自らの後孔に丸みのある先端を押し当て――押し当て?

「え、ちょ、待てそれは食い物だぞ…!」

人参!ワシの人参!人参人参ニンジンにんじんンンンンー!

「ふん、こんなまずい野菜…これくらいの、用途が、ちょうど…いいんだ、よっ」

ぐちぐちと卑猥な音を立てながら、伊佐奈は本来排泄を行うべき器官でワシの大好物をくわえ込んだ。

「……くっ、」

こうされてしまっては、流石のワシも呆気にとられて固まるしかない。
この非道、淫乱、根暗ビッチ陰湿不潔。目の前でこれみよがしに神聖な食べ物を汚した伊佐奈への罵倒は次から次へと浮かんできたが、結局その全てが脳内破棄されることとなった。
なんてったって、エロい。いまこのとき、ワシの前で顔を真っ赤にして自慰に徹する伊佐奈はとんでもなくエロかった。
ワシの好物であるとは言えど所詮は野菜の棒切れ。それに真っ向から嫉妬した挙句対抗するとは何事だお前。もっとこう、人を誘うにも正攻法ってもんがあるだろう。

「はは、ほ、ら…どうだ、椎名…?お前の人参、こんな、じゃ…もう、食えない、な…?」

ワシがじゅるりと唾を飲み下すのにも気付かないのか、伊佐奈は勝ち誇ったように口元を歪めた。こいつは頭もよくきれ狡猾だが、ときどきものすごく馬鹿なときがある。
ワシはそんな馬鹿を見上げ、しゅるりと舌舐めずりをした。

「…食べれる」

「え?」

「くく、はは…ああ勿論、食べるに決まってるじゃろ?……人参も、お前も!」

もう風呂とか飯なんて後回しでいいや。
すっかり気を取り直したワシは勢いよくがばっと身を起こし、無防備な伊佐奈に襲いかかった。




20101214

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