ラブシーン



※小林さんリク
※鼬佐




買い物のついでに、久しぶりに兄さんと映画館に立ち寄った。
さて何を見よう、という段になって、俺は無難に洋画のアクションものがいいんじゃないかと意見を述べ、兄さんは何やらうす気味の悪い邦画のホラーものが見たいと主張した。俺はホラーの類がてんで駄目なので断固として譲らなかったのだが、兄さんは兄さんでアクションなんざ内容がすかすかでつまらないなどと言いだし、かれこれ三十分は話し合いが続いた。
最終的に「これでは一向に埒があかない」という話になり、間をとってちょうどその十分ほどあとに始まる全く違う映画を見ようということでようやく纏まった。
のだが、それが何と言うか、内容がまたやたらまったりとしたラブストーリーだったのである。
前半はひたすら退屈でそれはそれで辛かったのだが、中盤になると主役の若いカップルがもろにあはんなアレをやりだして、映画館でこういった映画を初めて見た俺としてはどうにも居心地が悪い。
皆はこういうのをどういう気持ちで見ているのだろうか。
気になってちらちらと周囲を盗み見てみるのだが、意外に無表情ばかりが並んでいたりする。
早くこんな気恥ずかしいベッドシーンなんて終わってしまえばいいのにと思うものの、大画面大音量であんあんと艶めかしい声を上げられては、俺だって多感な思春期の少年だもの、直視せざるを得ない。
なんだか無性にドキドキして、ちょっと本気で興奮して。
別に成人指定ってほどでもない。この程度で幼稚な葛藤をしている自分が恥ずかしくてそわそわしていたら、急に手を握られてびくっとした。
兄さんだった。

「サスケ、ちょっと」

兄さんは唇だけ動かしてちょいちょいと手招きをし、俺が素直に顔を寄せたところでいきなり頬に唇を押しつけてきた。

「!」

どん、と身体を突き放す。何するんだという目で兄さんを睨んだが、清々しいまでに楽しげな笑顔を返された。
有りえない奴だ。俺たちの後ろにも沢山人が座っているのに。

「初心だな」

唇の動きから兄さんがそう言ったのが読みとれたため、俺も躍起になって言い返す。

「なんてことすんだよ。アホ。アーホ」
「恥ずかしいのか」
「そりゃ、見られてるんだぞ」
「可愛い奴」
「あんたなぁ……!」

暇つぶし代わりにされる身としては、腹立たしいことこの上なかったが、他の客がいる手前下手に声を荒げることもできない。
やきもきしていると兄さんの手がまたにゅっと伸びてきて、今度は俺のズボンの上から股間を触り始めた。
これは流石にマズいと焦り、俺は慌ててその手を掴んだが、布越しでありながらも兄さんの手が案外気持ちよくて、反抗にまで至らない。
実のところ映画の方でキスシーンが始まった辺りから半勃ち状態だったのである。
浮き上がっていた竿に沿って、揃えた指で上下に擦り上げられる。
びくびくと脳髄が痺れるような快感が指の先まで行きわたり、思わず腰を揺らしている自分。
俺は咄嗟に袖口で口元を押さえた。もう限界だった。
ほどなくして兄さんの手がジッパーをずり下げ、ぱんぱんに張り詰めた中身を後ろめたさのかけらもないしれっとした顔で取り出した。
先端が冷やかな外気に晒され、一層感度が増した気がするそこは既にカウパーでびしょびしょになっていた。
血管の浮き上がった竿を兄さんの手が優しく握り、上下させた。溢れ出る液の絡んだ指がスクリーンの光を受けてぬらぬらと光っている。
イかせる気なら早くしてほしい。俺は縋るように兄さんの服の裾を掴みながら、必死に声を殺して身悶えた。
今前の客が振り返ったら確実にアウトだ。逮捕かもしれない。

「イきたい?」

兄さんは俺の焦りを分かっていてわざとそんな質問をしてくる。

「サスケのイった顔、絶対あの娘より可愛い」
「やだ、もう、……早くして」
「はいはい」

兄さんは手の動きを速める前にもう一度キスをしてくれた。
映画の中の登場人物がしたそれと重なって、多分周りには聞こえなかったと思うけれど。




20120126

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