エキセントリック園児.1



保育士という職業はパッと見穏やかに見えて、その実なかなかに骨が折れる。
只今午後1時15分。
ようやく寝静まってくれたにっくき園児達の寝顔から目を離し、さて面倒な帳面でも付けるかと顔を上げたところで、静雄は同僚がいないことに気付いた。

「あ?…ったく臨也の野郎、またどっか行きやがったのかよ」

元来怒りっぽい彼はまるっきり見落としていた。
スヤスヤ眠りこける正臣くんと杏里ちゃんの間に敷かれた布団が、巧妙に膨らんだまま抜け殻になっていることに。







保育士・折原臨也には他人には言えない秘密がある。

「んあ……あ、…っ」

彼は保育士という清らかな職業に従事しながらにして、根っからの少年愛好者――ショタコンであった。それも性的な意味を少なからず含んだ、醜い欲求つきの。
実際、学生の時分には勢いに任せて見知らぬ子供相手に何度か痴漢まがいの行動を取ったこともあり、警察沙汰になりかけたことさえある。
それでも単に子供が愛おしいと思える瞬間はまだいい。彼の小さな生き物に対する執着は決して穢れた側面ばかりではなく、保育士としての彼は厳しいながらも子供たちからの人気を得ていた。
しかしたった一つ、睡眠中の園児だけはどうしても臨也の理性を狂わせる。スヤスヤと寝息をたてる無防備な姿を見ると、身体がひとりでに良からぬ行動を起こそうとするのだ。
勿論、それが悪いことだという自覚はある。
ゆえに彼は自らその衝動を律するべく、昼寝の時間を子供たちから十分に離れたところで過ごすことにしていた。――しばしば、異常な行為にいそしみながら。

「ひゃ……あン……くん、らめぇ…」

保育室から離れているためにあまり使われない職員用トイレ。
彼は奥の個室の壁に向かって手をつきながら、露出した自らのペニスを懸命に梳き上げていた。

「ンっ!……ひぅぅ…」

目を閉じて無垢な少年達のあられもない痴態を妄想すれば、上下する手は加速する。じゅぷじゅぷ、じゅぷり。臨也は短く息を詰め、成人男性とは思えぬほどに甘い声を上げながらイった。

「……はぁ…、はぁ…」

張り詰めた性器から白濁液を散らしてまもなく、彼が達した余韻に浸っていたときのこと。
――不意に声が響いた。

「せんせー?」

「…!」

ハッと背後を振り返れば、スモック姿の小柄な園児が一人立っていた。

「や、これはえっと、あ」

――そう言えばもしかして、鍵をかけ忘れたかもしれない。
濡れた股間を咄嗟に押さえ、ぐるりと首だけ回して不自然に上ずった返事をする。

「ど…どうしたのかな、帝人くん!?」

「せんせぇ、ちんこイタイの?」

「ちん…え!?」

コレはまずいことになったと思った。
つい夢中になって気付かなかったが、今しがた何をしていたのか一部始終を見られた可能性が高い。
――うわ、コレ…クビなるかも。

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