成敗しちゃうぞ



※柚子茶さんリク
※園児帝人×保育士臨也
※「エキセントリック園児」とリンクしてます




保育士という職業はパッと見穏やかに見えて、その実なかなかに骨が折れる。
午後ニ時四十五分。
園児たちを寝かしつけたあと事務室で仕事をしていた臨也はふと目を覚ました。どうやら帳面をつけている間に机に伏せってうたたねしてしまったようだ。
昼寝終了時刻まであと十五分か――とそこまで考えたところで彼は自らの下半身に籠る違和感に気がついた。
寝ている間に勃ってしまったらしい。ここのところ仕事疲れで夜も抜いていなかったからだろうか。
同じ組を受け持っている同僚の静雄はいなくなっており、周囲に人の気配はない。それで起こされなかったのかと納得しながら便所に向かおうと事務室を出た、そのとき、

「おい臨也。どこ行くんだ?」

廊下で出くわした静雄に声をかけられた。

「あ、うん。ちょっとトイレに……」
「いざやせんせいあそぼ!」

甲高い舌足らずな声がした方を見下ろすせば、それまで静雄のジャージにしがみついていたらしい男の子が抱きついてきた。

「えっ、あっ」
「良かったな帝人ー。臨也先生が遊んでくれるってさ」

静雄はやっと手が離れたというすっきりした顔で今しがた臨也の出てきた事務室に戻っていった。
残された臨也は困り果てた様子で帝人を見下ろす。
竜ヶ峰帝人。大きな目とぺったりした幼い顔立ちが印象的な、園児たちの中でもとりわけ可愛らしい男の子なのだが、臨也はどうにもこの子が苦手だった。
特にこの、有無を言わせぬ眼差しとか。

「いざやせんせ、なにしてあそぶ?」

本来なら臆する必要などない相手を前に、臨也はあはは、と意味もなく笑い声を発した。

「うん、そうだね、何して遊ぼうか……」





結局トイレには行けないまま昼寝の時間が終了してしまった。
昼寝の後は園児たちの自由時間である。縄跳びや砂場道具を持って園庭に出ていく子もいれば、室内でままごとや折り紙などをする子もいた。
帝人はしばらく臨也にべったりひっついていたが、途中で飽きたのかクラスメイトの正臣や杏里を探しに離れていった。
臨也はホッと息をつくなり、慌ててくるりと踵を返す。
勃起は収まるどころか帝人が抱きついたり脚の間に座ってきたりしたせいで悪化していたのである。
だが事は不運に不運は重なるものだ。この貴重な隙にトイレを済ませてしまおうと園内に駆け込んだのも束の間、

「あ、いざやせんせいいたー!」
「ほんとだぁ!」
「ねえいざやせんせいあそんでー!」

何と勢力を増やした帝人が駆け寄ってくるではないか。横に居るのは正臣と杏里だ。

「え!?ちょ、俺……」
「あのねせんせい、ぼく、ヒーローごっこがしたいな!」

ちなみに子供がヒーローごっこをしたがる場合、自分が敵役を買って出ることはまずない。
臨也は三人の子供たちに引きずられるようにしてあれよあれよという間にダサい色合いの風呂敷だか何だかを着せられ、不名誉極まりないモンスターの役を与えられてしまった。要するに損ないたぶられ役だ。

「かくごしろよ!ぼくがセーバイしてやる!」
「とりゃあああああ!」
「ごめんなさい、ちょっとしばきます!」

完全にヒーロー気取りの帝人と正臣。
杏里に至っては謝りながら団扇でビシバシ叩いてくるから侮れない。

「ばばばばばば!どーだ、いたいだろう!」

偶然正臣の繰り出したパチンコ玉が股間にヒットしてしまい、臨也はその場ぐらりとでよろけた。
――今、なんか出たかも。

「……っ、ごめ、ちょっとタンマ」

早くも虫の息の臨也に対して、子供たちは容赦ない。

「にげるなんてゆるさないぞ!」
「このヤロー!」

今度は帝人の玩具の短剣がもろに掠めた。

「アッ……!やっ、待って、ああっ」

臨也はほとんど瀕死の状態で、まとわりつく子供たちを振り払った。
もう帝人の無言の圧力が怖いとか言っていられない。前はそろそろエプロンをした上からでも不自然なくらいに盛り上がっているし、今にも漏らしそうなのだ。

「ごめん、すぐ、戻りま、す」

臨也は完敗した悪役さながらに逃げ出した。




20120126

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