盗撮カメラ



風呂場から出た俺は、身体の余剰な水分をふき取るのもほどほどに腰タオル一枚のみで廊下へ出た。
ゆるりと上昇する鼓動の高鳴りを自覚しつつも、そのまままっすぐに寝室へ向かう。自室に入り扉を閉めると、自然、身体が緊張するのが分かった。
実は数週間ほど前からこの部屋には隠しカメラが取り付けられている。俺自身はいち早くその存在に気付いたのだが、あえてむやみにとり外すことはしなかった。誰が仕掛けたのか凡その目星がついていたからだ。
俺はあくまでリラックスした風を装ってゴロリとパイプベッドに寝そべると、腰に巻いたバスタオルを少し捲り上げて、脚の間に指を這わせる。

「ん……ふーっ…」

呼吸を落ち着かせるように大きく息を吐きながら、アナルの中へ湿った指を一本突っ込む。入浴で火照った躯はまだ柔らかくて、すっぽりとそれを迎え入れた。――大丈夫だ。この映像を見ている誰かさんのためにここは毎日解しているから、さほどの痛みも感じない。俺は俄かに調子付いて指を二本に増やし、奥をくちゅくちゅとかき回し始める。

「…んっは、あ…、あぁあッ」

駄目だ駄目、最高に気持ちいい。
他人の目があることを知っているから余計にそう感じるのかもしれない。
――ああ分かってる、自分に少なからずマゾヒズムの気があることくらい。
前立腺がごりゅ、ごりゅっと擦れるたびに発生するたまらない快感に思わず腰が浮く。胴回りに巻いたタオルがハラリとまくれ上がって恥部が露になり、俺はあっ、と切羽詰った声を上げた。

「…やだ……」

反射的にそう呟いて自身を隠そうと前に手を当てた。
後ろへの刺激のみで勃ち上がったペニスはけれど、そんなもので簡単に隠せるほど大人しいものではなかった。軽く接触するだけで刺すような快感が肌を駆け、気付けば衝動的に根元から握りしめ、ただがむしゃらに梳き上げている始末。

「はぁ…はぁあぅ、ん!だめぇ……おちんぽ、きもちひよぉっ、あう!」

寝返りを打って腰を高く突き上げた格好になる。
恥ずかしい。かっこ悪い。一人でこんなの、卑猥だ。
けれどそれすらも今の自分にとっては快感になっていた。もっと見て。よく見て欲しい。
俺ははぁはぁと荒い息をつきながらサイドボードに置きっぱなしになっていたお気に入りのバイブを手に取り、指の代わりに中へと押し込む。
潤滑剤なんて別に必要なかった。そんなもの無くても十分に濡れていた。

「んぁあぁぁあ…っ、あ、ひうっ…おしりきもちいいよぉ…!」

がりがり、がり。イボ付きの先端が最奥に到達して、振動に併せて縦横無尽に胎内をかき乱す。何もかもがぐちゃぐちゃになる感覚。呼吸が乱れ、肉棒を刺激する手が目に見えてトロくなって。
――ああ、だめ。気持ち良すぎる。だめだめだめ、もうイっちゃいそう。

「あ、やだ……、も……むり、ひゃぁんっ」

絶頂を極めるなり先端から白濁が飛び散り、無様にシーツの上を汚した。
――ああ、またやっちゃったよ。シーツ洗濯しなきゃ。
俺はくたりと脱力した身体をベッドに横たえ、虚ろな視線を天井に向ける。なぜかしら稚拙な笑みが漏れた。

「どう、だった……?」

――全く君という人は、いつになったら俺をじかに抱いてくれるんだろうねぇ?
カメラの謙虚な持ち主を想うと、少し、切なさが込み上げた。





20100824
企画『えーぶい!』様へ提出

BACK
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -