もっと、ちゃんと、君を.1



※ゆう子さんリク
※1部・里抜け前




怪我をしたサスケのところへお見舞いに行くことになった。
暁のうちはイタチと殺り合った一件でかなり重症を負ったのは知っていたものの、命に別状はないようだったのでそこまで心配していたわけではなかったが、サクラちゃんが花を持って行くというからそのついでだ。
病室で久しぶりに見たサスケは普段より少しぼんやりしていたが、傷は随分回復し、それなりにしゃんとして元気そうだった。
奴はサクラちゃんがハートマークを振りまきながら綺麗に向いてくれた林檎を素っ気なく受け取っていつも通りキザな仕草で食い、ベッドの横で頬を染めてその様子を見守るサクラちゃんを見ているだけでちょっとした邪魔者の俺はおなかいっぱいになった。
サスケは俺と違ってしょっちゅう女の子に優しくされるからありがたみが分かってない。俺だったら有頂天になる状況下にもかかわらずむすっとしたポーカーフェイスを崩さないなんて、アホの極みとしか言いようがない。
傷がまだ痛むのかいつもよりさらに固い顔をしているが、女の子はたいていクールな男子を好むからこれはこれでいいのだろう。
キラキラした目をサスケに向けるサクラちゃんが可愛くて、俺としてはそれだけでも気のりしない見舞いについてきた甲斐があったと思った。
サクラちゃんはサスケが残した分の林檎を俺に回してくれた。
それを食い終わったあとしばらく三人でたわいもない話をしていたが、サクラちゃんは途中で「このあと綱手のばあちゃんとの修行がある」と断って帰っていった。
俺もここで油を売ってるくらいなら一人で修行でもしようと思い一緒に病室を出かけたのだが、扉を半分ほど開けたところで止められた。

「――おい」
「ん?」
「今日は用事ないんだろ」
「え?うん、まあ」

先程ちらりと話したのを覚えていたのだろう。確かにエロ仙人との旅も終わったばかりでその日はちょうど任務が入っていなかった。

「だったらもう少し、その……ここにいたらどうだ?」
「へェ?サスケがそういうこと言うの、珍しいじゃん」

俺はぴくりと片眉を上げ、にやにやしながら扉を閉めてベッドの横に戻った。

「サスケ、もしかして寂しいんだ?」
「は、……そんなんじゃねえよ、このドアホ!!」
「ちぇーっ!可愛くねー奴!……んで?ツンツンのてめえが俺なんかに何してほしいんだってばよ?看病?あ、そだじゃあ林檎も一個食べるか?こー見えて俺だってウサギとか綺麗に剥けんだぞ。でも林檎ばっかだと飽きるか。代わりにこっちのバナナでも食う?」
「いや、バナナはいい。バナナはいいんだ」
「ふーんそうかサス、ケェ!?」

いきなりがしり、と掴まれた腕を俺はまじまじと見下ろした。
俺をつなぎとめているのはサスケの腕。悔しいことに俺より少し筋肉が付いているけど白くて綺麗な手。
困惑気味に視線を戻せば、まっすぐにこちらを見つめる夜色の瞳と視線が絡む。
イタチにやられた直後ほど弱っているわけじゃないけれど、しばらく見ないうちに少しやつれた気がする。

「急にどしたの?」
「ナルト」
「え?な、何!?」
「てめェ、バナナとか……わざと言ってんのかよ」
「やっ、違っ……どゆこと!?――ちょ、」

咄嗟に引き抜こうとした腕を何故か逆に引き返され、俺の身体はそのままバサリとベッドに乗り上げた。あろうことかサスケの上に。

「ちょっとお前な。どういうことだってばよ、これ!」

しかしサスケは無言のまま俺の胸倉を掴んだ。
まっすぐに俺を見上げる、そのどこか苛立ったような挑発的な視線に何故だかが無性に胸がざわつき、落ち着かなくなる。
まずいつもより距離が近い。近すぎる。サスケの黒い襟ぐりの深いTシャツから覗く首筋の白さに目を奪われそうになり、俺は思わず顔をそむけた。
そむけたけれど、すぐにサスケの手で顎を掴まれて無理やり正面に向けさせられた。ぐっと引き寄せられてサスケの顔で視界が暗くなり、唇にくちゅりと湿った感触が当たる。前に事故で味わう羽目になった懐かしいそれが本能的に閉じようとした唇をこじあけて侵入してきた。
俺は当然うーうーと呻いて突き放そうとしたけれど、病人相手に暴力をふるうのも嫌で実力行使は躊躇われた。
だけど男とキス、なんて。
湧き上がる羞恥心に顔がかあっと熱くなるのが分かって居たたまれなくなる。
抵抗がないのをいいことにサスケの脚が絡んできて、密着した腹に固いものが当たるのを感じた。
俺はそのとき初めてサスケが俺と“そういうこと”をしたいらしいと理解する。
エロ仙人の書いてる小説で好き合ったカップルがするエロい行為のことは何となく知ってはいたが、けどそれだって一から十までってわけじゃない。
しかもサスケは俺の初めてのライバルで、友達で。クールと言えば聞こえはいいが何かと馬鹿にしてケチつけてくるすかした野郎で、なのに女の子にもてもてで、勉強も忍術も俺の努力なんてはるかに及ばないくらいに完璧で。

「待てよサスケ……、どうしてこんな」
「――ごめん」

何のつもりなのかサスケは絞り出すように謝罪し、隠した理由の代わりに俺の身体を強く抱き寄せた。
そうするとこっちは否が応にもサスケの熱をまざまざと感じる羽目になり、自分から始めたことでもないのにどんどん追い詰められていく。
少しだけ荒くなった吐息が首筋にかかり、おかしな具合に身体の力が抜ける。
外で見るのとはまるで別人みたいなサスケにエロスを感じてしまい、そんな発想をしてしまう自分が恥ずかしくてたまらなくなった。
だってサスケは男の子だ。いくら自分がモテないからといって男に走るのはマズいことくらい、馬鹿でプライドの低い俺でも分かる。
腰を揺らしてぐりぐりと擦りつけられたサスケのものが俺の股間を刺激し、微妙な快感を生んだ。

(ちょ、コレ勃っ……!?)

俺はサスケより背も低くて発育も遅いから自慰の経験もまだほとんどないが、どういうことになっているのかは何となく分かる。いや、むしろそっちの知識だけならサスケよりあるかもしれないと思っていたりもしたが、人は見かけによらないものだ。

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