殺せない関係.1



※雪路さんリク




オイラはその日任務の当てられていた数人のメンバーとともに朝食をとっていた。
気温は低いものの外はカラッと晴れて任務にはうってつけだ。
いつも通りの朝――平和に感謝しつつ欠伸を噛み殺した、そのとき。

「いっやあアアアアアア!!」
「!?」
「ぐアアアアアア!!うげエエエエエ!!」

突如清々しい空気を切り裂いたおどろおどろしい悲鳴に驚いて、オイラは思わず朝食をほっぽり出して席を立ちかけた。

「待て、デイダラ」
「そうですよ」

のだが、夫婦のように息のあったサソリと鬼鮫によって椅子に押し戻される。
テーブルの向かいの席では、イタチがニュース番組を見ながら頭ぼさぼさの白い寝起き顔と虚ろな目をしてしきりに茶碗の中身をかき混ぜている。
それから少しした頃、がらりと食堂の扉が開いて背の高い男が一人入ってきた。角都だ。彼は一同に軽く会釈すると、オイラの隣の空いていた席に着いた。

「大丈夫なの?」

うん、という口癖をつけないよう注意しながらそれとなく様子を尋ねた。相方のサソリはわりと無頓着だが角都には以前一度咎められたことがあるのだ。
角都はこくと頷いて「いただきます」と手を合わせてから、

「問題ない。気絶させて杭で庭の木に縫いとめてきた」
「えっ、それゼツさん怒りません?」

鬼鮫がついうっかりといった調子で口を挟み、イタチとサソリは何やら複雑な顔で彼から目を背けた。
ゼツが怒るとどうなるのか少し気になったが、あいつはいつどこでオイラたちを監視しているか分かったものではないため、オイラは角都に別な質問をした。

「飛段、今度は何したの?」
「俺の育毛シャンプーを勝手に使ってやがった。減りが早いなと思ったら……なに、心配するな。飯が済んだら下ろしにいくから」
「オイラ別に飛段のこと心配してるわけじゃないけど」
「あ、そう」
「角都の旦那って意外と飛段には優しいよなぁ」
「え、そうか?」
「喧嘩してもなんだかんだですぐ仲直りするし……。昔からそうだったの?」

角都は頷いた。

「まあ、殺せないって分かってからは」
「殺そうとはしたんだ?」
「というよりは勝手に死にかけてただけだ。リーダーは思わせぶりなことを言うばかりで、きちんと説明しなかったんだが……組んで初めての任務で奴がへまして、死体を置きざりにしようとした俺の後を千切れた首持って追いかけてきたときは流石に焦った」
「おやおや」
「そりゃホラーだな!」
「けどよ、死なねーっつっても、ぐちゃぐちゃにして再起不能にすることはできんだろ。舌ひっこ抜いたら喋んねーし」

横から口を挟んだのは朝刊から顔を上げたサソリである。
それを鬼鮫が窘めた。

「サソリさんたら。食事中ですからそういう話題は……」
「鬼鮫、団子おかわり」
「――はいはい、“ご飯”おかわりですね」

鬼鮫はイタチから茶碗を受け取って席を立つ。
オイラは卵焼きに箸を伸ばしながら、首を横に振った。

「サソリの旦那は分かってないな、うん。角都の旦那がそんな酷いことするわけねーだろ」
「酷い?俺何か酷いこと言った?」
「鬼鮫、お箸落としたんだけど」
「足の指舐めてもいいなら拾ってあげますけど」
「あ、やっぱ落としてないない」

イタチがぶつぶつ言いながらテーブルの下に潜ったので、オイラはこっそり奴の頭を足の指で小突いた。
ら、何故かべろりと舐められた。嫌がらせのつもりらしいが、確かに結構気持ち悪かった。

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