操り人形.1



※ひよこさんリク
※泥蠍




俺は彼に対し常日頃からただならぬ興味を抱いていた。
砂の下にちょろちょろと隠れ潜む猛毒を持った甲虫の名を持つ、胸に分かりやすい弱点を一つ備えた球体間接人形。その言葉の通り彼は人形であり、本人もそうと認めている。
しかし奇妙なことに彼は他のありふれた多くの人間さながらに他人の指図を受けることを嫌う。あのような奇抜な造型をしておきながら、人形らしく本来の用途で扱われることを望まないのである。
おかしな男だと思った。
心など無用の長物だとのたまうくせに、移ろいゆく時やそれにともなう変化を恐れて必死に形をとどめようとするのである。
それって、つまり、失われる物事に対する執着だろう。
つくづく彼は不思議な男だ。
一般的に機械人形は特定の何かに執着したりしないものだ。
自分があべこべなことに本人は気が付いているのだろうか。
彼が無自覚にぽろぽろとこぼす感情の一端を拾い集めていくにつれて、俺はもっと上、それ以上を期待した。身ぐるみ剥いで、暴いて、納得のいくまで全てを解き明かしたくなった。
元々好奇心や探究心は強い性分である。
しかしサソリは俺の示した関心を知ってか知らずか、極めて非協力的だった。一緒にどこかへ出かけないかと誘っても「興味はない」と答え、部屋を押しかけてみても「何をしにきた」と冷たく返すばかりで整備の手を緩めるでもない。
不満を抑えて冷静な目で見れば、そういった反応は俺に対してだけではなかった。彼は根本的に他人という存在に興味を持たなかったのである。
けれどもサソリのその無関心こそが返って俺の好奇心に火をつけた。ないがしろにされればされるほど彼に興味が湧いたのである。
彼の可愛らしい童顔、面倒臭そうに俺を見る目をハッと開かせてみたいと思うようになった。俺だけを見て、感じて、それしか見えない、見ずにはいられないようにしてやりたいと思った。
しけた余裕を完全に失ったサソリはさぞや愛らしかろう。





ずぷりと身体を突き刺した針から薬が体内に撃ち込まれていくのを、サソリは信じられないという顔で見つめた。

「デイダラ?」

いつもと変わらない、静かな声に微かな動揺が混じる。

「一体何を……」
「別にそんな大層なもんじゃない」

俺は空っぽになった注射器を無造作に投げ捨てると、その手でサソリの二の腕を掴み、背後の壁に押し付けた。
がん、と鈍い音がしてサソリが低く呻き声をあげる。

「もし毒薬だったら、どうする。怖い?」

じっと俺を凝視するサソリがごくりと息を飲んだのが分かった。答えなど聞くまでもないのだろう。

「弱みを認めるのがそんなに嫌?」
「違っ……」
「違わないでしょ、うん」

相手の顔に強引に手のひらを押しつけながら言った。
サソリはうっと呻いて抵抗を示したものの結局は俺の左手の口を否が応なしに受け入れた。
唾液の絡みつく粘質な水音が心地よく耳を侵す。苦しそうに首を捻るサソリの顎を溢れた唾液がたらりと伝い落ち、ほの暗い電球の明かりを受けてぬらりと光った。
俺は力なく腕を垂れたサソリの身体を壁に押しつけたまま、外套のボタンを上から一つ一つ外していく。全て外し終わるとばさりと音を立ててそれは床に落ちた。
サソリは今にも零れ落ちそうに見開いた目で俺を凝視する。
その意識が羞恥一色に染まっていることに勿論俺は気が付いていた。

「気持ちいい?」
「んんっ……っふ、」

内側からズボンの前を押し上げているそれに膝小僧を押しつけると、サソリは今にも泣きそうな眼で俺を見上げ、いやいやと首を振った。

「どうして?気持ちよくない?」

わざと意地の悪い問いを重ねながら彼の腰帯を解き、それも床に落とした。ズボンのジッパーを引いて下ろすと、現れた濡れた下着の中央には大きな染みが広がっている。
俺はそれまで塞いでいたサソリの口を解放し、同じ手を下半身にもっていって下着の上からしゅるりと舌を這わせた。

「あっ、ぁ……!」

足が震えて立っていられないようだった。その場でぺたりと膝を折ったサソリに半ば引きずられるようにして俺は蹲った彼の上に身を屈めた。

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