俺の相棒がSなわけがない.1



※240000打、ゆうさんリク
※角飛前提の飛角


 一つ大きなあくびが出た。数年前から花粉症の気があり、春先のこの時期は少しつらい。
 俺はアジトの一室で先週の偵察任務の報告書に取り組んでいたが、うまい文章が思いつかず、筆が止まっていた。一緒だったあの男がまたバカをやらかしたせいで、言い訳を考えねばならないのだ。
 当の本人に始末書を書いてこいと言いつけて帰したのだが、一向に仕上げてくる気配がなかった。
 俺が席を立つと、向かいのデスクでそろばんをはじいていた部下が顔を上げた。
「またあの人ですか?」
「必要な書類がまだ出てないからな。焼きを入れに行ってくる」
「いいなぁ。俺にもそれくらい世話やいてほしいっす」
「バカ言え。普通、首は一回飛べば終わりだぞ」
「角都さん、それいつ頃終わります? 旦那がいないと仕事はかどらないっすよ」
「気持ち悪いことを言うな」
 冷たくあしらい、部屋を出た。上司に対する媚にしては度がすぎていると思うのは、おそらく気のせいではない。
 俺の近辺にはやや変わった部下が多い。今風の言葉でいうとマゾ。見張られたり叱責を受けたりするのが苦にならない人種だ。俺のような強面の男にも平気で甘えてくる。飛段によれば、それはお前がドSだからだよぉ、という話だった。俺が前に相棒だった男を殺したためにそういうことになっているらしい。
 だが一つ弁明をさせてもらうと、あのときの相棒は相当足を引っ張っていたし、仲間内でも問題になっていた。俺が汚れ仕事を引き受けただけの話だ。
 きれやすい男だと思われるのは本来それなりに便利なものだ。周りが気を使って思い通りに動いてくれて、自分を中心に世界がまわる。
 だがなぜか俺にはそういった特権がなかった。
 うちにいる奴らは、たまに会うサソリや鬼鮫の部下と態度が全然違う。叱っても動じない。小言を言えば嬉しそうに応じるし、特に何もないときはいじってほしそうな目を向けてくる。あと全体的に馴れ馴れしい。先日はコックリなんたらとかいう物体の話を振られ、それはどんな口寄せ動物なのかと訊いたら爆笑されてしまった。彼ら曰く、それは性器につけて快感を増幅するものらしい。衝撃だ。そういう下世話なネタを上司の前でするなんて、俺が若い頃は考えられなかった。しかも角都さんの手でつけてほしいんですけど、なんてほざいているやつまでいる始末。
 飛段の部屋をのぞくと、そこはもぬけの殻だった。どこかよそでサボっているのだろう。部屋の主の留守など気にせず俺は部屋に踏み込んだ。入ったことが判明すれば文句をたれるのだろうが、提出期限を守らないほうが悪い。
 書きかけの書類は机の上にのっかっていた。明らかに使用済みとわかる靴下の下敷きになっている。俺はひどい臭いを放つそれを払い落し、用紙を引っ張り出した。残念ながら限りなく白紙に近い状態だ。
 飛段の行き先を考えてみる。年の近い他の幹部の部屋か、ひょっとすると街かもしれない。
 奴を探すべくために踵を返した俺だったが、視界の端にきらりと光るものを見つけた。ぐしゃぐしゃの布団の上に銀色のわっかが落ちている。俺は寝床に近づき、屈んでそれをつまみ上げた。
 指が数本入る程度の小さなわっかだ。中心に向かって数個の丸い突起が出ている。先日部下が話していた器具に特徴が一致していた。
(飛段が使っているものなのか?)
 性具と思しきわっかをしげしげと眺めた。他人がすでに性器に取りつけたものだと思うと微妙な心情しか起こらないないが、未知のものに対し興味はあった。思ったより直径が大きい。飛段のブツはこんなに大きかっただろうか。
 俺は耳をすませて廊下に人の気配がないことを確かめてから、外套のボタンを下から二つほど外した。前をくつろげ、それを取り出す。わっかをはめてみようとしたが、案の定それはぶかぶかで固定できなかった。ちょっといらっときて思わず壊してやろうと思ったが、理性で思いとどまる。
 きっと自分の想像している使い方が間違っているのだ。勃起すればちょうどいい按配になるに違いない。
 わっかを通したまま、俺は指で刺激してみることにした。竿を擦っているとだんだんいい気分になってくる。
 しかし半分ほど勃ちあがったところで、扉の外から気配がした。
 ――やばい。
 勝手に使ったことが知れたら面倒なことになる。焦った俺は成長途中の息子を大至急しまった。間一髪、外套を下ろした直後に外から扉が開けられる。
「げ、角都」
 もちろん驚くのは俺ではなく、部屋の主であるこの男のほうだろう。本来は。俺が書類を催促しにきたことを察した飛段は、逃亡を決め込もうとした。
 だが、もちろんそんなことはさせない。
「おい!」
 俺は奴を追って踏み出した。そのときだった。

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