ふ、と目が覚めれば、そこは見知らぬ教室だった。窓の外は黒く、まるで闇のようだった。室内は薄暗い。長時間床に横たわっていたようで、上体を起こせば体が固まっており、足や腕の骨が鳴った。



WC優勝後、普段通り登校して授業を受けていたはずだった。クラスメイトや友人から祝福してもらい、予鈴が鳴って教室に入ってきた教師にも祝福してもらった……。そこまで思い出して、ようやく周りの状況に気がつく。



先程の自分と同じように床に横たわっている何人もの男性。よくよく見れば、自分の知り合いであり友人でありライバル達である。取り敢えず手始めに隣にいる男を起こそうと肩に手を掛けて驚愕した。



日本を離れて今はアメリカで暮らしている筈のその友人に、思わず叫びにも似た声を上げた。



「虹村……!虹村……ッ!!」
「ん……、何だよココ……。……藤崎ッ!?」



ガバッと体を起こした虹村に、ホ、と安堵の表情を浮かべるなつめ。普通なら数年ぶりの再会を喜ぶべきなのだろうが、今はそんなことを言っている状況ではなかった。取り敢えずこの場にいる者全員を起こそう、と2人で手分けしていく。数えれば全部で28人。チームメイトや中学の後輩など、本当に様々だ。



「藤崎さん、虹村さん」
「赤司……。一体どうなってるの?」
「俺にもさっぱり……。ですが、ここにいる全員が皆、バスケ部関係というのは確かです」



赤司の言葉に、何だか見慣れた感じがしたのはその為か、と納得する。その場にいたのは、誠凛、海常、秀徳に桐皇、陽泉と洛山、そして霧崎第一だった。ほぼ全員がスタメンだが、何人か居ない人物もいる。



「取り敢えず、状況を整理しましょう。ここは何処で、何故俺達はここにいるのか」



赤司の言葉に皆は頷く。何故自分はここにいるのか。全員が同じことを思い、答えに辿りついた者は誰もいなかった。



「見たところ教室みたいやけど……。なんやおかしないか?そもそもワシと諏佐は図書室におったんや。自分らも、高校で授業やら何やら受けとったんとちゃうか?」



せやろ?と今吉が問いかける。なつめは同じクラスの伊月を見つめる。目が合い、コクンと頷いた。各々の反応を見て赤司はふむ、と顎に手を当てた。



「そうなると、誰かがここに連れてきた、という線は薄そうですね……これだけの人数を揃えるとなると、時間もかかるし手間もかかる。しかも、連れてこられた時の事を覚えていない筈がない」



完全に手詰まりである。自分たちがいる場所も、理由も、どれ程の時間が過ぎているかも分からないのだ。なつめがつけている腕時計は12時36分と不自然な時間で止まっているし、黒板の上に掛かっている時計もまた然りだ。



そこでようやく、黒板に書いてある文章に気付く。皆が黒板に注目した瞬間、教卓の上に鎮座していたタイマーが168:00:00と表示された。1秒ずつ刻々と時間は減っていく。



「168時間…7日経てば何かが起こるってことか」



眉を顰めた花宮がタイマーを見つめる。多分そういうことでしょう、と赤司が同意し、再び黒板に目を向けた。



「何なんだ、これは」



















Caution!!

コンティニューの効かない1度切りの
ゲームです。プレイヤーは全部で64
人。在校生27人、卒業生36人、教
師1人。在校生は、どんな手段を使っ
ても構いません。必ず卒業生を卒業さ
せましょう。卒業生は在校生を卒業生
にすることが出来ます。尚、在校生は
卒業生になったその時点でゲームオー
バーです。指定された期限迄に全員を
卒業させることが出来なければ、この
学校から出ることは出来ません。在校
生の皆さん、力を合わせて頑張ってく
ださい!
生徒指導部






















「え?何?ゲームプレイヤーなわけ?俺達」



高尾がポカンとした顔で呟く。



「在校生が27人ってことは、人数的に俺達が在校生…か。けど、教師1人って…誰だ?」
「多分、それはオレの事だよ、シュウ」



虹村の呟きに反応したのは氷室だった。皆の視線が氷室へと向かう。数少ない知り合いを発見したからか、虹村は少し嬉しそうに「辰也か!」と声を上げる。久しぶり、と互いに挨拶をした2人に疑問を抱いた紫原が問いかける。



「室ちん、虹キャプと知り合いなのー?」
「あぁ、アメリカで知り合ってね。ちょっとした悪友みたいなものかな」



悪友って……。と少し苦笑した虹村。なつめはなるほど、と納得しながら話を戻す。



「氷室くん、氷室くんが教師ってどういうこと?」
「…これだよ。ほら、この腕章に“教師”って書いてあるだろう?」



氷室が指し示した腕には、確かに腕章が安全ピンで服に留められており、“教師”と金の糸で刺繍してある。氷室は首を傾げた。



「何でオレが教師なんだろうね?皆には胸元の布に数字が書いてあるけれど……」
「2604……。名札やないか?そんできっと、この数字は生徒番号みたいなもんやろ」



今吉が、自身の制服に縫い付けられた布の番号を読む。見ると、氷室以外の全員が、左の胸元に細い名札を付けているようだ。そして、氷室以外にも腕章を付けている者が数名。赤司に笠松、桃井に実渕、そしてなつめである。赤司には学級委員長、笠松には副学級委員長、桃井と実渕には書記、なつめには保健委員と刺繍されている。



「赤司が学級委員長で藤崎が保健委員か……。見事にピッタリだな……」



虹村が言えば、確かに。と皆は頷く。赤司となつめは顔を見合わせ、少し笑った。

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