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※この下からはお礼文です。
今月はAKUMA。夢主で死ネタになっています。
苦手な方は閲覧注意です。
●D灰(AKUMA。夢主)
●死ネタ、グロ注意。苦手な方はブラウザバック推奨。
例えばの話しだ。
例えば、この聖戦が終わりを迎えたとして、その先の未来には一体、何があるのだろうか。
平穏。
安息。
多大な犠牲を払って得た「世界平和」は、人類にとって唯一無二の物だろう。
「聖戦」が終わる時。それは即ち、この世界からAKUMAとイノセンスが消える時。自分の、「戦う」という存在意義が消える時だ。
離れた地面に横たわっている自分の腕を、地に頭を付けながらぼんやりと見つめた。
ぐちょりと音を立てて湿る団服を濡らしているのは、ただの水ではない。つんとした鉄のような臭いが鼻につく。
視界が赤い。
イノセンスを握らぬようにと切り落とされた両腕。
簡単には死なぬようにと抉られた腹部。
内臓が出ていないのが、せめてもの救いだろうか。
助けを呼べぬようにと潰された喉。
足元に散らばるイノセンスの破片。
自身の傍に散らかるAKUMAの破片。
いたいなぁ、と呟いた筈の声は掠れ、空気になり、小さく消えていく。母音しか発音できないことに気付き、思わず自嘲すれば体が悲鳴をあげた。
「どうして……!どうして、こんな…ッ!」
『ぁ、ぇ、(ア、レ、)』
「いやよ……!いや、いや、いやぁ……!」
『ぃぁ、ぃ、(リナ、リ)』
1度は焼失したけれど、また長くなった綺麗な髪の毛。撫でようとして手を伸ばすけれど、伸ばす腕が無いことに気づいてまた笑った。顔をクシャリと歪めてポロポロと涙を零すリナリーに、ごめんねと言いたい。
私を瀕死にしたAKUMAを壊し、救済したアレンにありがとうと言いたい。
辛そうに顔を歪めて歯を食いしばり、イノセンスを握る手に力が入っている神田とラビの手を優しく撫でて、ごめんねと言いたい。
でも、そんな簡単な事も、今の私には出来ないんだよね。
「戦争が終わったら、皆で色んな所に行こうって、言ったじゃないですか…!なんで、何でこんな所で死にそうになってるんですか……!!」
「いや、いやよ……!私の前から、消え、ないで…!ずっと、一緒に、居て…ッ!!」
「……なァ。俺さ、アレンとユウと一緒にお前の敵、取ったんだぜ?レベル4だぞ?偉くね?なぁ。……何で、こんなんなってんだよ……!元帥だろ!?しっかりしろよ……!」
そうだね、そんな約束もしたね。ちゃんと覚えてる。ラビとアレンの今までの旅の知識を総動員して、案内してくれるんだよね。アレンは迷子にならないように、気を付けなくちゃね。
もう2度と破らないと約束したあの約束を、私はまた破ってしまったね。本当にごめんね、リナリー。ずっと一緒に居るって、約束したのにね。
見てたよ。ちゃんと見てた。珍しく感情が爆発してた神田と、珍しく連携を取って瞬殺していたね。私の知らない間に、こんなに強くなってたんだね。……本当、元帥失格だよね。なんでこんな所でやられてるんだろうね。ありがとう、ラビ。頑張れ、ブックマン。
「……お前を愛すると言った。お前を護ると、誓ったんだ」
そう言って私の頬についた血を拭う神田の指は、心なしか震えていた。珍しいな、なんて。嬉しいな、なんて。
馬鹿野郎、と小さい声で絞り出すように呟いた神田の顔は、とても優しかった。そして、哀しそうだった。
例えばの話。
この聖戦を終えたら、どうしようかって。
任務に出掛ける前、皆でそんな話をしたね。例え話でも、色々な想像が膨らんだ。とても、楽しかった。
でも、でもね。
そんな例え話が、私にとっては。
とてつもなく、眩しかったんだ。
『……ぅ、ぁ』
「ぁあァ…!いや、いやよ……!死なないで…ッ!!!置いてかないで……!!」
これが走馬灯なのだろう。今までの記憶が、全て流れてくる。「イードレの記憶」「元の世界の記憶」「この世界の記憶」。長くて短かった「記憶」が、脳内を駆け巡る。
痛い。
体温が奪われていくのが分かる。
寒い。
さむい、よ。
あぁ、やっぱり死んでしまうんだって、思ってしまった。自身に「リカバリー」は効かない。そもそも、イノセンスの声が「聞こえない」。
ごめんね、貴方達だけでも、逃がしてあげたかった。
ずっと傍にいてくれた、私の心の拠り所。「紅」、「跳ぶ人」、「治癒の祈り」、「水龍」。
ごめんね。
ふわり、と体が温もりにつつまれた。動かされた事で体に激痛が走ったけれど、そんな痛みも気にならないくらい、私は幸せだった。
「……ずっと、傍にいてやる」
「1人にはしないさ」
「いつまでも、一緒よ」
「以外と、寂しがり屋ですからね」
暖かい体温。大好きな香り。私の体を抱きしめる神田。優しく頭を撫でるラビ。離れようとしないアレンとリナリー。ようやく落ち着いて、穏やかな顔をした彼らに安堵した。
私は、貴方達の笑顔が好き。
私は貴方達を、その笑顔を、
守ることが、
出来たんだろうか。
動かない筋肉を総動員して、無理矢理に笑顔を作る。不器用に微笑んだその顔のまま、小さく口を動かした
『(だ、い、す、き、)』
最期に見た彼らの顔が、私の思い出。私の目を閉じさせた神田の手が、とても暖かかった。
(さよなら、私の大好きな世界。)