05-3.ひとりでできるもん!
ミツヒロは刺された腕をぶんぶんと回しながら創介に睨みをきかせた。
「お、思わぬ方向からの援護射撃にちょっとビビっちまったぜ……けどなあ、それもここでお終いだぜオニィサン――今すぐブッ潰す」
「ちょ、ま、タンマ! 話し合うべき! 話し合うべきだってコレ絶対!」
「るっせぇええッッ! とっとと逝けやオラァア!」
巻き舌で捲し立てて襲いかかってくるミツヒロだったが、瞬間、創介の中で何かが覚醒し始めていた。
そう、そうだこれは――過去に何度も経験した場面じゃないか! 創介はピーンと何かに閃くのだった。古い表現で言えば、ちょうど頭の上に電球がぱっと輝いた。
「みっ、見切ったァアーーー!」
「んなっ……!?」
降りかかってきたその刃を、創介は見事白刃取りで防いで見せた。そうだ、女の子たちに浮気がばれて何度こうやって刺されかけて死にかけたことか。その度に学習しろ、と周囲からは白い目で見られていたものだが――なるほど、学習しているじゃないか。確かにこの身にそれは備わっているようだ!
ミツヒロがぱっと飛んで一度身を引く。
「何だよ、てめぇ全くの素人ってワケじゃねえのか……?」
面白くない、と言った風にミツヒロがややばつが悪そうに舌打ちをする。
「は、は……っそ、そ、その通〜〜り!」
調子に乗った創介が、それまでの情けない尻餅姿から一変しその場にすっくと立ち上がった。
「そのまま刃をしまって引けば、お、俺の……えーと、俺の必殺拳? を食らわずに五体満足で帰れるぞッ」
全くのでたらめだったが、ここまできてしまったのだからもう通用するものは全て使いきってしまうべきだろうと創介は判断したらしい。
極力、相手がびびるよう、声を震わせず創介が叫ぶ。
「ひ、必殺拳……だと……?」
ちょっとだけビビったようにミツヒロがごくんと唾を飲んだ。
「そ、そう……だぞよ」
おかしな語尾になっているのに気が付いているのかいないのか創介は尚もハッタリをかまし続けた。
「わ、我が中国百年の歴史より受け継がれるー、あー、えー、そのー……ご、五本の指で敵の五つの急所を同時に突く事で! 食らった相手は五秒も絶たぬうちに全身を痙攣させ、心臓が口から飛び出して死ぬ!……その名もッ」
出鱈目を述べる創介の熱演に、ミツヒロは意外にも黙って聞き入っている。表情も至って真剣そのものであるから創介もつい演技に熱が入ってしまう。
「ご、剛天爆塵心掌!」
「な……何だって?」
技名を聞きとれなかったミツヒロが眉間に皺を寄せながら聞き返すが創介は無視して出鱈目な構えを取り始めた。
「お……、おぬしも余の拳のサビにしてくれるぞよ!」
かつておばあちゃんが健康のためにとやっていた太極拳のような構えを真似しつつポージングを決めながら創介が指先でミツヒロに挑発をする。
「…………」
「ど、どうしたボーイ? はっ、まさかビビって何も出来なくなったのか? おもらしか? ははっ、そいつは傑作だ! どれお兄さんがオムツの替えを」
「てめえ、嘘ついてんじゃねえよ」
とは言えその演技力に一瞬騙されかけたミツヒロが多少自分に恥じつつ睨みつけて来た。
「う、う、うー? 嘘じゃ、嘘じゃない、です、よ」
「何敬語になってんだオラ、さっきまでの威勢はどこいったんだよ? ア?」
――うっわ、すげえ怖い!
その迫力はコンビニ前でタムロするヤンキーのお兄ちゃんを遥かに凌いでいる、ドスのきいたその声といいメンチの切り方といいとんでもない。ミツヒロは再度腰の引けつつある創介の足首をゲシゲシと蹴りながら迫ってくる。
「い、いやそのですから俺を怒らせると、ええと、こ、怖いですよ……」
「あぁん? だったら出してみろや、その何たら拳。オラ、出せって。とっとと出してみい。あ?」
「だ、出すには色々気とか集中させないとダメなんで」
「どうせ出せねえんだろ。え? 何? 何て」
「いや、出せる、出せます。出せるっす、はい……」
「どうやって。ほら。ほら」
半ば楽しんでいるようだ、半笑いを浮かべてミツヒロは後ずさりする創介を更に更に更に追い詰めて行くのだった。
アウトレイジビヨンドで
ガラ悪い男三人組がバッティングセンターで
玉でねーぞーっていちゃもんつけてたら、
従業員がもっとチンピラで怖かったシーンが
すごくすきwwwwww
「お金いれてないんでしょ?」
「いれったっす……(弱気)」
「いくら? いくら??」
って感じで詰め寄るチンピラこえーー!!
あんな事んなったらほんとタマヒュンだわ