中盤戦


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31-1.愚者の再会



 創介達が廃病院へと入る前に早速銃声が二発ほどした。ゾンビからの急襲を受けたのは想像がつくが、こんな危ない場所で(逆に言えば今安全な場所なんてほとんどないのだろうけど)待ち合わせだなんて、一体どういう話なのか。

 あまりにも突然過ぎて先の見えない話だったが、とにかく……創介とセラがようやく病院の中へと足を踏み入れた。

 遅れて残り数名も病院に入ったその瞬間、背後で扉が音を立てて勝手に閉まった。それで一切の光が閉ざされてしまい、辺りは一瞬のうちに闇に包まれた。

「うへぁっ……!?」

 驚きのあまりか声がひっくり返る創介のすぐ背後を――、何か暗闇の中きらっと光るものが吹っ飛んできた。

 放物線を描きながら、それはこちらへ向かって飛んできている。その物体を視覚……というよりは、その研ぎ澄まされた感覚の中に捉えるなり、有沢がその一瞬のうちに一歩踏み込んだ。

 ぼさっとしている創介を押しのけると、彼は当然よろめいたが構っちゃいられなかった。

 有沢が刀を抜くとその物体めがけて刃を振るわせる。それは見事に命中したが……勢いを失ったそれは横手に弾き飛ばされた。

「な、何……っ」

 創介が叫びざま、自分達へと投げられた異物を確認する。

 銀色に反射するそれは円盤状で、中央に穴が開いていてCDのようにも見えたけど明らかにこちらの方が重たそうだったしおまけに切れそうだった。

 こんなものが命中したら……と思うと創介はぞっとするのを隠しきれない。誰が一体、何のために? その疑問への答えはすぐさま声となって返って来た。

「みなさーん。お揃いで?」

 気の抜けるようなその声には何となくだが聞き覚えがあった。薄暗い廃病院の中、このメンバーの誰のものでもないその声は――創介をはじめとする一同がふっと視線を持ち上げる。

 創介達のいる一階のホールから、見上げる形で二階部分を見上げると人影がいくつか見えた。

 半壊した瓦礫片の上に片脚を乗せながら、こちらを窺うようにその影が立っている。今しがたこの円盤状の――チャクラムとよばれる武器だ――を投擲した張本人であろう。

 左右の指にはめられたそのチャクラムをぶんぶんと回しながら男が不敵に笑っている。その周りを取り囲むように揺れる影はその仲間達だろうか。

「暗闇からの奇襲にも動じないなんて……さすが」

 はっきりとその全貌が分からないまま、影は言葉を続けた。

「少々の問題はありましたが、まぁ何とか無事に合流できたみたいで」
「……? だ、誰だ、アンタ?」

 こちらの気など知らずにペラペラと喋りまくるその影に創介が眉根を潜めた。当然、状況などよく掴み切れないままだ。

 とにかく今知りたいのは、こいつらが敵なのか味方なのか。ただひとつ、それだった。

「お前ら一体誰……」

 創介が叫ぼうとした矢先であった。電気が通っているのか不思議であったが薄暗かったその病院内に電気が一斉に灯った。

 急激な光のせいで一瞬目がくらんだがすぐに視界は慣れてくれた、矢継ぎ早にその声の主を見つめる。

「――やあ、こんにちは。初めまして、……なのかな。一部そうでない人もいますが」

 明々と照らし出された室内に現れたのはまこと奇妙な格好をした連中であった……、中央、このどことなくフザけた喋り方をするマント姿の青年を筆頭にその隣には眼帯をはめたやんちゃそうな少年。

 その反対側には、まばゆい金髪を三つ編みにしたまだ十四、五歳くらいの少女。

 そしてその奥には学ラン姿に眼鏡の少年と、更にその隣でヘッドホンをつけてぼーっとしている少年。……極めつけはウサギの着ぐるみを被った野郎……いや男なのか女なのか分からない。年齢さえよく分からない。


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