26-6.愛し合う事しかできない
二つの意味でもびしょ濡れ状態なのだが、まあそんな事は置いといて二人は前戯もそこそこに早速盛り上がっているようだった。金網がガッシャンガッシャンやかましかったが構っていられなかった。
「あ……あっ、ふあっ」
「――み、ミミュー……こっち向いて……」
「駄目、声っ……ああんっ」
立ちバックの姿勢だったのだが、こっちに向かされてしまった。目があう形になってしまい、ミミューは思い切り顔をそらしたがった。
「んっ……」
それをすかさず唇を重ねる事で阻止させて、二人は視線を合わせながらまた行為を再開させた。ミミューがガイの肩に手を回しながら息を喘がせた。
「もっと――」
「何? 聞こえないよミミュー……」
「もっと強く抱きしめて……」
ほとんど雨音にかき消されそうだったのにも関わらず、それはちゃんと恋人の耳に届いていたようだった。
「うん……」
小さくガイが答えると、ミミューの身体を精いっぱいに強く抱きしめた。
「そろそろいいかなあ〜」
一真が満足したのか泡だったコーラのペットボトルを見つめた。中身はコーラ本来の色よりも泡で埋め尽くされているように見えた。
「うわー……」
創介が悲鳴にも似た声を洩らすのをよそに、一真は嬉しそうにそのもはやコーラと呼んでいいのかさえよく分からない液体を見つめた。
「それもうコーラじゃねえよきっと。泡だぜ、泡」
創介が追い打ちをかけるが一真はニコニコしている。凛太郎はそんな弟の奇行にはもう慣れっこなのだろう。生温かい視線だけを送っているばかりだ。
「飲んでもいい?」
「あー、勝手にしろ勝手に」
もう構うのも面倒くさそうに創介があしらうように言った。が、肝心な事を忘れていた。そうだ、これ炭酸じゃないか。
それに気付くのと同時にセラがばっと振り返った。
「馬鹿、こんなところで開ける……」
セラが叫んで身を乗り出した。が、遅かったらしい。一真は既にペットボトルの蓋を回していた。ブシュッ、とあの独特の音がしたかと思ったら最後、中身が勢いよく車内に発射された。
「あ〜〜〜〜〜〜〜っ!」
創介が絶叫する。一真はポカンとしている。凛太郎は面倒くさそうに肘を突いてそれを眺めている……。セラは泡まみれになりながら何度もむせた。
「……げほっ、げほ! あ、甘っ……」
顔に思い切り浴びせられてセラは凄く不機嫌そうだった。
「ごめん……」
一真が本当にそう思っているのかとりあえず謝罪の言葉を呟いたようだった。
「謝ってないで拭けよ!」
創介は慌ててタオルでセラの顔を拭いてやる……この惨事のせいで車内がいっきに甘ったるい匂いで満たされて行くのであった。
たまにこういう下品なジョークを
ついつい挟みたくなるよね。
この右手〜〜!