中盤戦


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25-4.優しい悲劇



 ミミューは夢中で走り続けたが、やがて行き止まりに当たってしまった。金網によって封鎖されたその向こう側へ行けば、もっと安全かもしれない……ミミューは金網に手をかけた。

「――おい!」

 が、その時。ミミューはびくんと身体を強張らせて、硬直した。

――何で? 何でよりにもよって……

 その声は、さっきまではとても聞きたくてたまらなかったものだけど今はちょっとばかり遠慮したかった。

「……動くんじゃない。おかしな真似をしなければ、こちらも手出しはしない」

 おまけに銃口まで突き付けられているときたものだ……、ミミューは背後を振り返らないように、金網を握るその手をゆっくりと離した。

「ようやく見つけたぞ……。ヒーローと称して、暴力行為を繰り返し働く悪党め」
「っ……」

 雷が一つ、閃光と共に鳴り響いた。心臓に悪い音だ、いい大人が耳を塞ぎたくなってしまうほどである。あんなにも会いたくて仕方なかった筈の愛しいその人は、自分のすぐ傍にいるのに。本当ならすぐにでも振り返って抱きつきたかったのだけれど――ミミューは、振り向く事さえ出来なかった。

 只黙って、俯いていた。

「……少し、署まで来てもらおうか。お前には山のように聞きたい事がたくさんあるからな。今回のこの火事の件についてもそうだ」
「――……」
「……。さっきここへ来る前に、子ども達に言われたんだ。お前を逮捕するな、って。……どういう事なんだ? 子どもを助けたとでも? まさかとは思うが……そんな真似をしたところで、お前の罪が帳消しになるとでも思っているのか?」

 雨が、一層強くなった気がした。ミミューは何も答える事が出来ずただ、黙っていた。振り向いて何かしら弁解出来る事はあったのだけれど……頭の中がぐちゃぐちゃになって、何も言えなくなった。

 黙ったままでいるミミューを見て、ガイは先の質問に対する肯定だと判断したらしかった。ガイは拳銃を下げると、一歩、足を濡れたアスファルトの上へと踏み込んだ。

「――何故……。だったら何故、初めからそんな真似をした? お前のやっている事は正義なんかじゃない、正義を振りかざして単なる暴行を働いているだけに過ぎない……」
「何故?……決まってるじゃない、君の力になりたかったんだよ」

 そこでようやく、ミミューが口を開いた。吐かれたその言葉の内容云々よりもまず何より……その声に、ガイは驚愕したようであった。当然、だろう。よく聞き慣れたその声が、何故ここにいるのか理解出来なかった。

 それまで背中を向けていた、その敵であるはずの存在が――それまでどこかおぼろげにしか捉えていなかったその輪郭が、形が、振り向きつつあるその姿をはっきりと浮き彫りにしていくようだった――何故、何故、自分は今まで気がつかなかったのだろう。

 あんなにもすぐ傍にいて、この腕の中で何度も抱きしめていたはずだったじゃないか。ガイは、何だか自分の中でじんわりと広がって行く生温いものを感じた。

 それは何と言えばいいか、毒にも薬にもなりそうな、不思議な感触をしていた。

「ミ、ミュー……なのか」

 無理やりに絞り出したようなその声は、掠れていて、自分の声とは思い難いくらいボリュームに乏しかった。語尾の方はもうほとんど、雨音にかき消されて聞きとれなかったに違いないだろう。




絵柄で嫌う人多そうだけど
バキまじ面白いんだけどどうしよう。
BAKIと範馬刃牙までは集めた。
死刑囚の辺りも好きだけど
ピクル編好きだな 人気ないらしいけど
克己VSピクルほんとすき
本当の母親との再会→片腕消失までの
流れがぐう泣ける



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