中盤戦


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19-1.真実が欲しい



19-1.真実が欲しい


 無人の道路を走りながらミミューが周囲を注意深く見渡す。これまた随分と遠回りになってしまったのだが、安全な道をと迂回を重ねた結果がこの道だった。

「……だーれも走ってねえなぁ。ほんとにこの道、大丈夫か?」

 創介が不思議そうに尋ねる。

「もう破壊し尽くされて道なんて関係なくなってるよ……コレ」

 凛太郎が崩壊したその道路を見渡しながら呟いた。

「神父、私でよければ道案内しましょうか?」
「え、本当に? ナンシーちゃん、前々から思ってたけど道詳しいんだねぇー」

 感心したようにミミューが呟くと、ナンシーは小さく首を振って答えた。

「……そんな事はありませんよ」
「そうかな〜。いやあ、助かるよ。じゃあナビ、頼むね」
「……」

 素直にそれを了承するミミューの表情とは打って変わって、雛木は膝を組んだ姿勢でナンシーをじっと見つめた。何を言うでもなく、雛木は横目でナンシーの表情を腕を組んだままじっと窺い見る。

「それにしても、また一降り来そうな空模様だなー。これは」

 ミミューが空を見上げながら独り言のように呟いた。彼の言う通り、まだ昼前だと言うのに空は薄暗くて灰色をしていた。こう、雲にすっぽりと覆われてしまっては太陽の明かりが一寸も見えない。

「降っても大した事がなけりゃいいけどなぁ〜」

 創介がぽつんと囁くように言った。車内にいた全員がほぼ同時に沈黙になった途端だった。

「たすけて!」

 外で誰かが襲われているのだろうか、と思ったがそうじゃなかった。

「一真……何見てんだ」

 さっきから俯いているので眠っているものだとばかり思っていたが、そうではないらしい。一真はスマホを膝の上に置いて、一人観賞会をしているみたいだった。

 凛太郎が問い掛けるが一真は動画に夢中だった。ネット上にアップされた動画でも眺めているのだろう。

「たった今、ツイッターで回ってきた動画見てるの。児童養護施設がゾンビの襲撃にあって火事なんだって。助けを求めるリツイートがたっくさん回ってる」

 創介がふぅっとため息を吐きながら呟いた。

「……お前しょっちゅうそういうの見てるよなァ。それも笑顔で。変態だぜ、へ・ん・た・いっ!」
「みんながみんな同じものを見て興奮するわけがないでしょ、僕から言わせてみたらペニスやオ○ンコみたいなそういう人に見せるべきではない部分をアップで映す方がよっぽど変態だよ」
「ああ、まぁそれもそう……ってこらっ! 今お前さらっと卑猥なワードを言っただろ、禁止禁止! 女の子がいるのにそういう言葉は禁止! ヘイ、レッドカードだぞ今のは!」

 創介がそれを言ったところで全く説得力は無いが……まあ、とにかく――セラは創介の事は眼中に入れぬように、一真に問いかけた。

「児童福祉施設、って。それは、まさかとは思うが……この付近での話なのか?」
「そうだけど、どうして分かったの?」

 一真が言うのと同時にスマホを見せてきた。




彼とのドライブデートで
そんなに好きじゃない歌手の曲を延々聞いている
というあの微妙な苦痛加減



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