中盤戦


≫top ≫▼title back

02-4.クイック・アンド・デッド



 当然全員があんぐりとその光景を見つめているうちに、まりあはブルース・リーよろしく器用にヌンチャク・アクションを始めた。華麗なるリストスピンにより、ヌンチャクがひゅんひゅんと風を切る華麗な音が響き渡る。

 少年たちはやっぱり唖然とその動きを追うのに必死になったが、最後にはチェーンを手の甲に絡めつつシッカリと決めてまりあはゾンビどもに向き直った。見てくれは可愛らしいキランキランのその武器で、あんな腐れた奴らに立ち向かおうと言うのか。

「兄上! こっちは準備オッケーですぅ」
「ああ……」

  突き破られたガラスの向こうから一気にゾンビ達が押し寄せて来る――これが映画、それも何か出来の悪いとびっきりのB級で悪趣味なヤツ――だとするなら現在のBGMはエレキ・ギターのイントロがやかましいハードロックといったところか。それもアーティストの許可なく使用しているに違いない。

 走ってくるアグレッシブなゾンビ達を迎え撃つのはヒロシの二丁拳銃の炎だった。ヒロシは顔色一つ変える事無く次々にその銃の引き金を絞った。大した反動も無いのは気のせいか? 忙しなく動き回るその的達の脳天に、ヒロシは見事に弾丸を貫通させていく。

 放った弾丸の空薬莢が足元に散らばった。

「ヒイァアアッ」

 もうすっかりヤンキー形無しの少年達は抱き合い、耳を塞ぎ、その恐怖に涙を浮かべて耐えていた。乱れたリーゼント頭の少年が、弾切れしたヒロシを指差して「あ」と叫んだ。

「――どんな時もクールに、ってやつか」

 弾が尽きたと知るや、ヒロシは焦る事無くマガジンをポーチから取り出し空中に投げた。親指で、マガジン・キャッチを押しこんだ。空になったマガジンが落ちて行く一瞬を見届けぬうちに、ヒロシは手のうちにある拳銃のグリップを回転させて見せた。今しがた投げ放った方のマガジンを見事に受け止めて見せ、差し込んだ――これで交換完了。

 ヒロシは再び手の内で銃を持ち直し射撃を開始した。自慢のヘッドショットのテクニックは劣ってはいないらしい、次々と辺り一面が血の海と化して行く。

 状況が状況でなければ拍手を送りたくなるほどの華麗さ。映画でも見ているみたいに鮮やかであった。

 まりあの方も負けてはおらず、怪鳥音を上げながらゾンビ相手にヌンチャクで応戦しているようだった。ヌンチャクのみならず蹴り技も多用しながらまりあはもう完全に気分はブルース・リーなのであろう。

「ほあちゃぁああっっ!!」

 そしてゾンビをぶっ飛ばした後のドヤ顔、鼻の頭を親指でクイッとやる仕草まで完璧にリーの仕草をコピーしている……。

「う、うんぐぐ……」

 気絶していたリンダが騒ぎに意識を取り戻したらしい、もぞもぞと動き始めるとゆっくりとその場から復活したのだった。手をついて起き上がると、その場の血みどろの状況にまずは絶句した。

「ゲェッ、何だこの――」

 立ち上がって後ずさりしていると、倒れていた死体に足を取られて尻餅を突いた。その上に飛びかかってくるのは二体の子どもゾンビであった。

「ぐわっ、ぐわ、うわぁああああ〜〜〜〜〜っっ!!」

 彼の絶叫と血しぶきがブシュ〜っと勢いよく東京の上空に舞い上がった……。





ちまつり!
ってわけでヌンチャクアクションなまりあ嬢ですが
今回も汚い言葉は健在なようです。
怪鳥音ってのはアレです。
ブルースリーが戦うときに叫ぶアチョー!とかの
あの叫びのこと。
女の子が叫びながらアクションしてるとすっごい可愛い。
アクションというとどうしても強い=怖いと
なりがちだけどうまく中和されていいよね。



×
「#寸止め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -