中盤戦


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02-1.クイック・アンド・デッド



 リンダさんと呼ばれたその細身だが中々に上背のある男は(ヒロシより頭一つ分ほど大きい)舐めまわすかのようにこちらをジロジロジロジロと見渡した後、そのほとんど消失している眉毛を潜め、道端に痰と唾をプッと吐き捨てた。

「ちょっと話し相手になってくれゆーとるだけじゃないの、オニィちゃん。こんな状況なんやしぃ、協力し合ってもいいじゃない? ネ?」
「……生憎ですが僕らは急いでいるんですよ」
「じゃっかぁしいわオルァアッ!! 何敬語で喋っとるんじゃ嫌味やのぉおお!! 何気取っとんのや、おーーー!?!?」
「――チッ……」

 ヒロシはわざと聞こえるように舌打ちしてから思いっきり不愉快げに顔を歪めた。まりあに荷物を預けると、ヒロシは乱れた喉元を片手で直しつつリンダさんへと向き直ったのであった。

「じゃあさっさと終わらせてやるまでですよ――くだらない」
「ア。俺がもし勝ったら、言う事聞いてくんない?」

 負けた前提で話が進むのにまずムカついたが堪えておいて、ヒロシはぴくんと眉根を持ち上げた。

「そっちのネェちゃんとチューさせろ。分かったな」
「げげげげっ!!!」

 まりあがここぞとばかりに身をよじらせて拒否反応を示したのは言うまでもなかった。

「……ちょ、ちょ、絶ぇええええ対、嫌ッ! 死んでも嫌ッッ! アンタにキスするくらいならウチのあの低学歴眼帯おバカとした方がまだずぅう〜〜〜〜っとマシよ!! あ、あ、兄上! 絶対に勝ってよね、まりあの純潔をあんな聳え立つクソになんか捧げませんから!」
「ゲヘヘヘ。気の強い女はいいなぁ、益々気に入ったぜ……ゲヘヘ……」

 下卑た笑いを浮かべるリンダさんの表情といったら、さながら男性向けエロ同人誌に出てくるよからぬ悪さを働く悪漢を思わせるものであった。




 一方その頃で、ヒロシ達の登場を待つルーシー一行は彼らがそんな災難に巻き込まれている等とは露も知らないでいる。

「ぶえっくしゅ!……あ゛ー、クソ」
「おや、ミツヒロ君。お風邪ですか?」
「……知らね。風邪菌くらいでいちいちうろたえられねえわ、もう」

 ズズッ、と鼻を啜ってミツヒロが頭をぼりぼりと掻いた。

「あ、良かったらお茶どうぞ。身体も温まりますよ」

 修一が温かいお茶を運んでくるなりに、そんなミツヒロの前に差し出してくる。目が合うとニッコリと微笑まれてしまい、ミツヒロは途端に何だか毒気を抜かれてしまうのであった……。





癒し系な修一お兄さんでござった。
いつかミツヒロ君が修一兄さんにライバル心燃やしつつ
でも彼の性格だからあんまり恋愛面では
好戦的にならないというか自分が入る隙なんかないなと
分かってるから意地悪になりきれないみたいな
話を書きたいんだけどミツヒロいい子じゃね?



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