07-4.殺れば出来る子
不思議そうにそれを見つめるミツヒロの視線を汲み取ったかのように、ルーシーが答えた。
「こうしないと盗もうとする馬鹿がいるでしょう?」
「あ、ああ……そゆ事……――で、話戻すけど、つまりスパイを忍ばせたって事か」
「ちょっと言い方は悪いですけど、まあそうですね」
「大丈夫なのかよ、ソレ。ばれたら殺されたりしねーのか?」
ルーシーは絡みついていた鎖を外しながら答えた。
「さ〜てね。本人もそれを覚悟の上でしたし」
「……ったく、なんつう奴だオメー……えげつねぇ事やるなあ」
「まあ、僕も最初は不安でしたけど話を聞く限りでは随分とナヨナヨとした甘っちろい連中ですよ。それに――」
「?」
「僕にとってはちょっとした知り合いも含まれてました。これはとても興味深いことです」
どうやら、その言葉だけは独り言のようであった。実に気になるその言葉を捨て置いて、ルーシーはスタスタとまた歩いて行ってしまった。
「……? 知り合いって……」
「さ、ぼんやりしている暇なんか無いんですよーみなさん。一刻も早く行きましょうね〜」
半ば強制的に終わらされてしまったやり取りに、幾分か消化不良な気持ちを抱えつつも……しょうがなしにミツヒロはその場から立ち上がった。
トラックに準備を詰めていると、ルーシーの背後からかけられる声があった。
「ナオ」
その名前で自分を呼ぶのはリオと、そして修一ぐらいのものだ。ルーシー……いや、その瞬間だけは自分がありのままでいられる時であった――ナオ、は、笑って頷いた。
「ん、何? 兄さん」
修一は少し目配せしつつ、子ども達とともにおずおずと手にしていたそれを差し出した。そしてそんな修一の背後から顔を覗かせているのはやはり心であった。
「……口に合うかどうか分からないけど……これ……」
綺麗に蝶結びされたその包みの中身は――彼お手製の弁当だろう。ナオはやや驚いたような顔を浮かべたもののすぐにそれを受け取って微笑んだ。
「――ありがとう」
「いつでも帰ってこい……ってのも変だなぁ。うーん……、と、とにかくさ……その。ナオが帰る場所はちゃんとあるんだからさ。待ってる人間がいるって事、忘れないで欲しいな……」
そう言って脱力したような笑顔を浮かべる兄は、離れていたちっとも昔と変わらない――悲しい笑顔。昔っから、よくこういう笑い方をする人だった。この笑顔を見る度に切ないような、苦しいような、胸が締め付けられる思いでいっぱいになった――ナオはその気持ちがまるまる昔に戻ったようになって、こみあげてくる気持ちに唇を噛み締めた。
「修一、悲しませたら駄目だよ絶対に」
そのやるせない気持ちを加速させるように心が呟き、ナオは堪らなくなって一度目を閉じたのだった。
「……兄さん」
「? 何だよナオ、お前……」
泣いてるのか、と言いかけたところできつく抱擁された。
「――はは。泣き虫だなあ、本当。昔からだけどさ」
「……うん……」
その様子を既にトラックで待機していた一同が黙って見つめる。
「ったくあいつの情緒不安定さだけは分からんなー。なあ、フジナミ」
「あいー」
ミツヒロとフジナミがそんな会話をする傍らで、まりあは腕を組んだまま不機嫌そうな顔をしている。その横ではヒロシが我関せず、といった装いで肘を突いていた。ウサギ野郎ことストライカーはやっぱり自分の世界に陶酔している。
「お待たせしました。じゃ、早速行きましょうか。ミツヒロくん運転よろしくね」
「分かってるよ。安全運転で行きますよ、っと」
ハンドルにミツヒロが手をかけるタイミングとほぼ同じタイミングで、まりあが毒づいた。
「口じゃそんな事言うけど実際どうかしらねー。あんたって言った事守った試しないんだもん」
「……さっきから何苛々してんだこの女。あれか、生理前か」
「生理前だったらとっくに殺してるところよ、このボケナス男! 使用済みのタンポン口に突っ込んで窒息死させてあげようかしら!」
「……まりあ、女子の使う言葉じゃないぞ。もう少し言葉を選びなさい」
掴みかかろうとするまりあを、ヒロシがちょっと疲弊したような顔で抑制するのであった。一体どこでこういう言葉遣いを覚えてくるのか。テレビなのか漫画なのか友人からの受け売りなのか……。
「おっとぉ、ミツヒロくん今のはセクハラに当たるぞ。セクハラは容赦なく解雇しちゃいますからね」
ルーシーが助手席で笑い笑いに言うと、ミツヒロは小さな声で謝罪したがそこに心はあんまりこもっていないような感じがした……。
まりあちゃんは将来絶対に
ビッチになると思うんだよね。
殺人鬼に率先して殺されるブロンド頭の
セクシー女キャラだな。
ところでジェイソンがセックスしてる若者を
率先して殺すのには理由があるのだよ。
ジェイソンが幼くして死んだのはね
湖で溺れているのを監視員が見つけられなかったから
という悲しい世界なんだけど
その監視員はセックスに夢中だったんだよね……
リアルにありそうだよなぁ。