中盤戦


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07-2.殺れば出来る子



「依頼はもうルーシーに渡してある。改めて確認しておさらいしようぜ」

 ミツヒロが言うとルーシーが一歩前に出た。

「そう。ここにちゃーんとあります。――で」

 ガサゴソとルーシーがズボンから取り出したその紙きれは、ミツヒロがあらかじめ渡してあったものだ。ルーシーがその紙を開いて、再び目を通してから言った

「……依頼主はですね、」
「僕だ」

 ルーシーが言いきる前に、ヒロシがすっと足を進めた。その横でまりあが驚きを隠せないような顔をしていた。

「あ、兄上がぁ!?」
「ああ」

 ヒロシが一つ頷いた。ルーシーが紙に書かれているのであろうその依頼内容に改めて目を通す。

「それで……内容には間違いや変更はありませんね?」
「……無いです」
「よろしい。この人物の拘束――ということでオーケー?」

 ルーシーが一緒に添えられていた写真を差し出した。ヒロシがそれを確認してから頷いた。

「――ああ」
「で、そいつの事は殺してもいいのか?」

 ミツヒロが単刀直入に問い掛けるとヒロシは静かに首を横に振った……なるほど、それは重要な問題だ。それを明記しておくのを、すっかり忘れていたのをヒロシは思い出した。

「いえ――駄目です。それだと、意味がありませんから。生きながらの拘束が目的ですので」
「しかし暴れたら?」

 ミツヒロが再度問い掛けるとヒロシはややあってから答える。

「抵抗するのであれば、多少の暴力はやむを得ない。だけど喋れなくなるのは困りますね、彼には聞きたい事ばかりなのですから」
「拷問かい!?」

 ルーシーが突然のように目を輝かせたかと思うと躍り出た。その両目が湿り気を帯びたように輝いて見せるのは多分気のせいじゃないんだろう。

「……。ええ、まあ、口を割らないようでしたら少しくらいはその必要があるかもしれませんが、ね」
「じゃあその係は僕に任せてもらっていいかな?……あ、勿論ちゃんと殺さないようにやるから。意識も失わないようにね!……ふふ、ふへへぇ……」

 心なしかいつもよりもペラペラと実に早口にそう言ってから、ルーシーが念押しするように笑いかけた。

「……あ、ああ。ですけど無抵抗な場合はあまり傷つける必要はないかと」
「それは勿論! 時と場合によって使い分けますから大丈夫ですよ。僕を信じてくれていいのですよ! 大船に乗ったつもりでッ!」

 言っている意味はよく分からないがルーシーの笑顔は無闇やたらと自信に満ち溢れていた。

「じゃ、喋れたら五体満足である必要性も無いって訳だ。――しかし、何でこんなヤツを? 無害そうにしか見えないけどな、こいつと同じで」

 ミツヒロがフジナミを顎でしゃくりながら言うと、ヒロシは少しだけ考え込むようにしてから言った。

「……そうでしょうね。普段は僕らと変わりの無い学生らしいですし」
「へー」

 ミツヒロがターゲットの写真をもう一度見つめた。その横からまりあが急に顔を覗かせるので驚いたらしい。大袈裟なほどに肩をびくつかせたあと、やや気まずそうにまりあの顔をちらっと見やった。

「ふーん。でも悪い奴ならとっちめなきゃいけないんだよね?」
「まあ、まだ悪い奴かは分からないのですがその可能性の方が高い……という事ですかね」

 ヒロシが至って冷静に呟くと、ミツヒロはその写真をピラピラとちらつかせたのであった。



「ターゲットの名前だけどさ。……世良……、読みはセラ、でいいんだよな、これ。で、居場所は?」







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