中盤戦


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07-1.殺れば出来る子



 リビングに再び集結した自警団メンバー達は顔を見合わせる。見れば見るほど珍妙すぎるその組み合わせ。普通の世界でこいつらが徒党を組んで歩き回っていたとしたら職質レヴェルであろう。あるいは単なるコスプレ集団と見なされて後ろ指でもさされるのか。

「……よし。これで全員揃ったかなー、っと」

 ルーシーが皆の顔を見渡しながら一人頷いている。

「たいちょー!」

 これから再びあの悪夢の街へと足を踏み入れると言うのに――まりあの相変わらずどこか緊張感に欠ける、明るい声。

 いや、緊張してはいるのかもしれないがいまいちそれが伝わらないというか伝わりにくい。

「あの〜。何だか見慣れないヒト……? うさぎ……? が、一人いるんですけどー」

 挙手させたまままりあが視線でその件の人物を指した。勿論、ストライカーの事だが本人は多分自分の世界に依然引きこもったまんまだ。

 何だか、ブツブツと独り言が聞こえて来た。そういえばまりあのファンだと豪語していたが、あらゆる面で大丈夫だろうか――ミツヒロは何かしでかさないものかと、まるで目を光らせる小姑のような視線を投げつけた。

「ん? ああっと、紹介が遅れましたね。――ほらっ、ストちゃん」

 ルーシーがパンッ、とその両手を叩くとストライカーがびくっとその顔を上げた。

「自己紹介して。簡単でいいから、というか巻いて巻いて!」
「は、は、はい。はい。あ、あ、あ、あの、あの、ひぎっ」

 やけに機械じみた動作でストライカーはぎくしゃくと皆の前に躍り出る。その背後では、ルーシーが腕を組んでにこやかに見守っている。

「こ、この依頼より、は、は、は、初めてメンバー入りさせていただく事になりました……ストライカーといいます! 友達から宜しくお願いしますまりあさん!」

 何となく聞き捨てならない後半の台詞に、ミツヒロとヒロシの鋭い視線が一斉に注がれる。まりあはよく分かっていない、というカンジで小首を傾げている。

 フジナミは鞄から今度はあんまんの包みを取り出した。齧りついた――一体どこで買って来たのだろう? そんな疑問はおいおいに、再び一同の視線がストライカーに戻る。

「ふ……フフ。これで活躍して俺は故郷に錦を飾るんだ……そして若くて可愛いお嫁さんもゲット……」
「こら、ストライカー君。分かっているとは思うけどセクハラは解雇ですからね!」

 ルーシーがストライカーの肩に手を置くとストライカーは矢継ぎ早に振り返ると叫んだ。

「そそそっ、そんな! 俺はそんな不純な事は考えてません! むしろですよ、むしろ、むしろむしろそんなサイテーな男をシバキ倒すために俺はやって来たのですからねッ!」

 身の潔白を全力で証明するが如くストライカーはその首を大きく横に振った。それで少しマスクが浮いたのだが慌ててそれを両手で押さえてからストライカーが息継ぎしつつ言う。

「そうですとも! 女性を弄び、踏みにじる野郎のイチモツなんか、イチモツなんか、イチモツなんか〜〜ッ・この俺が握りつぶしてくれるっ! このようにっ!!」

 言いながら何を興奮したのかストライカーは腰から下げてあったスタンロッド(バトン型のスタンガンだろう)を手に取ると、両手で思いっきり握り締めて捻るような仕草をしている。ギリギリとそれを捻り上げながらストライカーは小刻みに震えている……。

「わ、分かった。分かったから、そのー……さっさと依頼の確認に入らないか?」

 ミツヒロがなだめるように言うとストライカーはハっとしたようにそれを元の位置に戻した。


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