06-1.その一言がいえない
当たり前だがセラはそう遠くには行っていなかったので、幸いにもすぐに見つけることが出来た。
セラはこちらへ背を向ける格好で、赤いセダン(タイヤが盗まれているせいなのか四つとも付いていなかった)の上に腰を降ろしている。少し俯く感じで、セラは創介の事には気付いていないみたかった。創介は、頭を掻いてからちょびっとばかし気まずそうにため息を吐いて見せた。が、これにもセラは気付いていない。創介は覚悟を決めたようにもう一度その脚を動かした。
「よ、よー……」
努めてにこやかに振舞いながら創介が声をかけると、セラがばっと振り返った。驚いた猫のような動きを連想させた、その大きな丸い目と視線がブチ当たる。
――げ、こいつ泣いてんじゃん……
その潤んだ目に、創介はぎょっとした。セラは慌てて顔を逸らすとやや丈の合っていないモッズコートの袖で乱暴に涙を拭ったのであった。
「あ、あー……」
それで気まずそうに言葉を失って、創介が慌ただしくその視線を右往左往させた。
「何?」
いつものセラと同じ調子の、ぶっきらぼうな感じのする声がした。
「隣、座っても……?」
おずおずとだが創介が尋ねると、セラは声には出さずに何度か小さく頷いた。失礼しまーす、と創介の間の抜けた声がして、その横にどっかと腰掛けた。前々から思っていたのだが、セラは人慣れしてないんだろう。男女問わずこうやって距離が詰まると反射的に避けようとする癖がある。
セラは視線と共に創介からちょっとばかり避けるようにしてその身を動かした。
「あのー……、その。えぇと、何だ。何、言おうとしてたんだっけ今。俺」
「……」
「こほん。……んー……何で、泣いてんの?」
「別に――そんなの人の勝手だろ」
そりゃそうなんだけど――と創介が言い置いてから、再び口を開いた。
「あの、さっきぶってゴメン。悪かった。あと感情的になりすぎた」
しどろもどろになりつつ創介が言うと、セラが何だかその言葉に意外そうな顔をした。いったん、置いてから言った。
「――何で創介が謝るのさ」
「は? そりゃ悪いと思った部分は謝るべきでしょ?」
その台詞にセラは益々のように混乱したような顔になった。口を半分開いて、何を言うべきなのかまとめているようにも見えた。
おや!?
行くのか!? 行ってしまうのか!?
ところでセラ君の服の丈がでかいのは
貧乏なのでそうぽんぽんと服も買えないと思った末に
あらかじめ大きなサイズのを買ったはいいけど
伸びなかったという悲しい貧乏エピソードがあるんだよ。
わざとそういうあざとい萌え袖にしたんじゃないよ。
いや半分狙ったけども。