中盤戦


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07-4.家族ってなに?



 威力そのものは大したものでは無かったのに違いないが、問題はその当たりどころだ。

 顎への命中、というのはこれがまた実に痛いものである。

 小柄な女性が身の丈のある男を相手にしたとしても、顎を狙って裏拳(※極力スナップを利かせるのが望ましい。その際、殴る方の手ではなく引き手に力を入れる事を意識してっ! 引き手は後ろの相手にエルボーを食らわせるくらいの勢いでも良いのです、引きの力が強ければ強い程殴る腕に力が入ります。これで大男に襲われても大丈夫だ! どんまいっ!)や蹴りを食らわせれば大いに怯ませることが出来る――ちなみに、綺麗に決まれば一発でノックダウンさせる事も可能だ。

 ナンシーは咄嗟に顔を逸らしたみたいだがそれでもやはり衝撃はあったのか、ふらついているみたいだった。

 揺らぐ視界の中をさまよってナンシーが詰まったような吐息と共に、くぐもった呻き声を洩らす。

「くっ……」
「きゃははっ、顔の守りがお留守だったみたいね〜お嬢ちゃん!」

 顎を押さえてナンシーがきっと女を見据えるが、女はその間にも敏捷な動きで逃げるチンピラと合流を成功させる。二人は足並みを揃えながらスタコラと逃走していった。

「あ、あいつっ……このっ!」

 叫びざまナンシーが悔しそうに追いかけようとするが、ミミューが背後からそれを制した。

「い、今はそれよりも」

 ミミューの声に頭に血の昇りかけていたナンシーもすぐに冷静になったようだ。そうだ、先に対処しなくてはいけない事がいくつかあるのだった。まずは――、と背後を振り返ると先程噛まれた若者が既に立ち上がっていた。

 人としてではなく、生きた死体として。
 
 ゾンビとして目覚めたばかりの彼は、歯の根をガチガチと鳴らしながら白く濁った目を剥いて何か脊髄反射のようにビクビクと背中を何度か逸らせた。内股気味にふらふらとこちらへと足を進めてくる。

 まだどこかまどろむような調子で、ゾンビは耳からは大量の血を零しつつ近寄ってくるのだった。が、ナンシーがすぐさまに引き金を絞ったお陰で牙を剥く前には難なく倒すことが出来た。

 額に風穴を開けた若者がどさっと倒れるのを見届けてから、ナンシーが銃口を下げた。

「……そっちは、創介くんに任せていいかな」

 ミミューが軽く笑いながら言うと創介が我に返ったようにハっとなった。それだけの言葉であったが、創介は言われなくても分かっているという風に頷いた。

「よし。じゃ、早く行ってあげてくれ」

 迷う背中を後押しするようにミミューが言葉をかける。

「わ、分かってるよチクショウめ!」

 何故か半分怒鳴り調子で言いながら、創介が走り出したセラの後を追い始めた。



ほら泣かしたぁああああ
もおおおおおおお



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