カニバリズム


▼紺律




「紺君、起きてください・・・!ご飯!」

夢か現かわからない微睡みの中、今聞こえるはずのない律君の声が聞こえた。
じゃぁ、これは夢だ。そうだ!夢なんだ!
夢でも会えるなんて幸せだな。
しかも今日は休みの日だし。
会えないのに夢で会えたから僕満足!
うん、幸せ。

「紺君!」

脳みそシェイクされた。ぐわんぐわんされた。
下がベットだから痛くはないけど、僕の上半身を起こして揺すってから突然、手を離してベットに落とすのはやめてほしい。
というか、律君って意外と力あるんだね・・・。
普段からは想像もできないし、そもそもしたくないし。

「おはよ・・・。」
「おはようございます。ご飯。」

二言目がご飯!?僕よりご飯なの!?
・・・どうやら律君はお腹を空かせているようだ。
だから強引に僕を起こしたんだね!
まだ気持ち悪いよ!
というかなんで律君いるの!?
あー・・・・えっと、そうだ!お泊まり会してたんだ。そうだそうだ。
昨日は律君と一つのベットで・・・寝れるわけないよね。
・・・寝たかったな。
無言のままずっと待ってる律君から差し出された“材料”を受け取り、ほぼ条件反射で律君専用のご飯を作る。
携帯を見ればもう11時。
休日だからって気を抜いていたらしい。
多分、律君の事だから部屋の本でも読んで待ってたんだと思う。
机に座り、シャーペンを動かしてると感じる視線。
目は口ほどに物を言う。目が輝いてるよ・・・!
犬のように待つ律君を見つつ、僕はふと素晴らしい事に気がついちゃった。
律君が!私服!クソ可愛い!!
普段、会う時は必ず学ランな律君。
昨日も家へ来た時は学ランだった。
学ラン姿も可愛いよ!
でもね、彼氏としては私服を見たいわけですよ。
中にはコスプレさせる野郎もいるみたいだけど、僕はしないよ!
律君が嫌がる事なんてしたくないからね!
あ、でも律君可愛いからきっと似合うんだろうな・・・。
見てみたいな・・・。今度頼んでみようかな・・・。
ナース服やメイド服。そんな定番中の定番を着た律君を想像したらムラムラしてきた。
朝から息子が元気だよ!いちよう男子高校生と同じ年齢だしね!

「紺君・・・?」
「え、あっ、ごめん。ぼーっとしてた。」

下心を綺麗に隠すように、バレてしまわないように笑顔を取り繕えば律君は納得したのかまた大人しく正座をする。
あっぶねー・・・。
もし綺麗な律君にこの下心がバレてしまったら僕は嫌われちゃうかもしれない。幻滅させられるかもしれない。
律君がどんな反応を取るのか僕にわからない。
わからないから怖くてしょうがない。
最悪、彼を失うかもしれない・・・。
女々しいかもしれないけど、嫌んだ。
好きなんだ。だーーーいすき。
もし律君から見返りの言葉がなくったって僕は彼を愛すよ。だって大好きだもん。
この気持ちを素直に伝えてもいいけど、律君の大好きな物へ込めたらもっともっと喜んでくれると思う。
だから僕は書くんだ。全ては律君の為に。

「りつく〜んできたよー。」

ほぉら、嬉しそうな顔をした。
これがあるから苦手な文章を書くんだ。
しかも甘い恋愛物を。
そのまま書いた物を渡せば手を合わせる。
“いただきます”の合図。
僕の書いた文章を読みつつ、千切り口に入れつつ律君は“食事”をする。
始めて見た時は驚いたし、味なんてないだろって思ったけど慣れって凄いよねー。
あー、可愛い。
小動物を連想させる律君の食事姿は何時見ても可愛いと思うし、これを見れる数少ない中の一人なんだって思うと凄く嬉しい。幸せ。
なんか僕もお腹空いたな。

「律君、僕もお腹空いたし食べてくるね?」

時計なんて気にしてなかったけど、11時からだいぶ時間は経ってるんだろうな。
ずーっと食べてる律君を見てたいけど、そろそろ限界だから部屋を出ようとドアへと手をかけると慌てて立ち上がる律君。
一緒に行く。なんて言ってるようだ。
なにこの可愛い生物。
しっかりと僕の書いた文章を持ち、ついてくる律君可愛い!小動物みたい!
律君、実は僕と同じ182cmの巨体なんだけど行動や動作が小動物にしか見えない。
もう食べちゃいたいぐらい可愛いよ律君。

「律君、律君。食べちゃいたいぐらい大好き。」

きっと純粋な君には意味が伝わらないだろうけど、それでもいいんだ。
そんなとこも大好きだから。
首を傾げる律君を撫でて僕は幸せを噛み締めた。



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