【 風の向こう 】
色褪せたバス停の前のベンチに
溶け出したアイスキャンディー片手に座って
蝉時雨 鳴き止まない夏の日に
友達が遠くで僕を呼んでいる
夕立 戸惑い 町の匂い 深呼吸
歩道橋 2分間 足音 人波 立ち止まる
ひとつずつ灯るあのビルの群れ
川沿いの帰り道ふざけて笑った
泣き虫な少年よそのままで
変わらずに変わっていけ迷いながら
夜明け前 横顔 あの時 あの場面
戻らないすべてを抱えて大切に
訳もなく大きくこの手を伸ばすけれど
ここからじゃとても届きはしない
あの風の向こうは
風の向こうは