届かない蒼

(イタチ)





「イタチ。」
「…」
「居なくなるなんて嘘でしょう?」

私の質問に、彼は答えなかった。肯定も否定もされていないのに、その沈黙に否定されているようで私の顔は歪んだ。イタチは私と目も合わせようとはしない。その行為が余計に不安感だけを煽った。

「もし、俺がその問いに否定をしたとしたら、」

ああ、こちらを見るその眼は、なんと憂いと哀しみを帯びているのでしょう。まるでこれからの未来を全て知っているかのような、そんな漆黒。

「**は…泣いてくれるのだろうか。」
「っ…イタチ、」
「今日みたいに晴れた日が良い、」
「それ以上…言わないで…」


それから半年後、彼は私の嫌な予想通り、居なくなってしまった。あの日と同じ、それはそれは嫌と言うほどに晴れた空が私の真上に広がっている。皮肉にも彼の小さな願いは聞き届けられたのか、イタチが消えた日もこれに負けず劣らず雲ひとつない晴天だった。

「結局、いってしまった、」

吸い込まれそうなほど綺麗なあの蒼い空に少しでも触れたくて思いきり手を伸ばしたけれど、虚しく。掴んだものは空虚。私は、空に伸ばしたのと反対の手で目を押さえ、声を圧し殺して泣いた。


届かない蒼

(どうか私も連れていってください、)





20120530







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