short | ナノ


▼Happy Helloween

(里を抜けていない設定)


どうしてしまったと言うんだ。
俺の目が狂っているのか、それともこれは現実じゃなくて夢なのか。どうにもこうにも、今の頭じゃ目の前に映る状況を把握しきれない。任務を終えて無事家に帰ってきたのはいいが、家に入った途端黒い猫耳と尻尾をつけ、上目遣いでこちらを見上げる彼女がお出迎えとはどういう状況なんだこれは。なまえは一体何を考えているんだ。お、襲ってくれということなんだろうか、それはまたそれで、なんとも大胆な

「トリック オア トリート!」
「…は?」
「イタチ、お菓子ちょうだい!」
「…」
「お菓子くれなきゃいたずらするぞ!」
「…」

少し冷えた思考回路で壁に掛かっているカレンダーを見やれば、今日は10月最終日。
ああ、ハロウィンか。そう言えば、こないだナルトが同期のみんなとハロウィンパーティーをするだとかなんだとか言っていたなあ…と思い出す。となればサスケも参加しているはずで、サスケは一体なにに仮装するんだろうと思っていたんだった。まあそれは後日ナルトにこっそり聞いてみるとして、つまり今そのイベントが俺にも降りかかったということか。
目の前の彼女を再度見てみれば、黒いコルセットを腰に巻き、ふわりと広がるスカートから伸びた細い足には普段は履かないニーハイが身に着けられている。これが噂の絶対領域というやつか。魅惑のその領域へと伸ばした手をぱちんと叩かれて我に返る。

「お菓子ないのー?」
「帰りに買ってきた団子があるぞ、食うか?」
「…あるのかあ…」
「なんだ、いたずらしたかったのか?何するつもりだったんだ」
「それは内緒だよ、ばらしちゃったらつまらないもん」

菓子に喜ぶか、いたずらがしたかったと駄々を捏ねるかのどちらかなと思っていたが、案外彼女は冷静で、やっぱり慣れないイベント事には乗っかるもんじゃないね、と苦笑いしながらお茶を入れに台所へ引っ込んだ。丁度良く団子なんて持っていた俺もなぜか少し申し訳ない気持ちになりながら、台所でせわしなく動き回っている彼女を眺める。いつもと違う格好をしているからなのか、はたまた猫耳と絶対領域のパワーなのかは分からないが、なんか…こう、意味もなく抱き込みたい衝動に駆られた俺もどうかしてしまったんだろうか。
2人分のお茶を入れて来てくれた彼女がいただきますと呟いて団子を口に含んだのを見てから、俺は人知れず口角を上げた。そして勿論、迷わず魔法の言葉を口にする。

「なまえ、」
「ん?」
「トリック オア トリート」
「…へ?」
「今日はハロウィンだろう?だったら俺も、トリック オア トリート。」
「む、う…」

案の定と言うべきなのか、なまえは自分が仕掛けることだけを考えていたようだ。数秒悩んだ彼女がおずおずと差し出してきた団子には「俺が買ってきたんだからそれはダメだ」と一喝し、別の返答を待つ。目を泳がせてどうしようか悩んでいる彼女に「お菓子持ってないのか?」と追い打ちをかければ、小さな声で、ずるい。ずるくなんかないだろう、俺は何も知らずに仕掛けられたんだぞ。だなんて、どうしようもない攻防戦。でも、それがとてつもなく楽しい。さあ、なにをしてあげようか。

「じゃあ、なまえにはいたずらだな」
「へ、変なことはだめだからね!」
「変なことって言うのがどんなことなのかがさっぱり分からんな。」

まあ、とりあえず、

「いたずらで…そのコスチュームを身ぐるみ剥がそうかと思うんだが」
「イタチのエッチ!ばか!」

顔を真っ赤にしてこっちを睨みつけるその顔が余計に俺を煽っていることなんて、きっと彼女は解ってないんだろう。
逃げ出そうとしたその腕を掴んで引き寄せて、寝室に連れ込んでしまえばこっちの勝ちだ。
未だ諦めずに「変態!」と喚いている小さな口に吸い付けば、甘い甘い味がした。


Happy Helloween!!


20141101
(1日遅れましたが…!!)

   

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