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▼謹賀新年

湯気の立つ鍋、おダシのいい香り。
たすきをくっと引っ張って、私は大声でみんなを起こすんだ。

「あけましておめでとうー!!」

…すぐに返事が返ってこないことなんて分かってる。昨日年越しテレビを見ながらあんなに遅くまで騒いでたんだもんね。でも、だからってこれ以上寝かせておくような優しさは私にはない。
居間で布団を広げ雑魚寝している男共が掴んでいた毛布を片っ端から引っペがし、起きなさいと言えば大体のメンツがイヤイヤながら目を覚ます。

「え?もう朝?」

朝どころかもうお昼だよ!そんな悪態をつきながら、回収した毛布をソファの上にまとめて一息。お酒臭いのはまあ仕方ないとして、年明けくらいみんなで一緒に美味しいご飯食べたいもんね。

「うおっ、すげー!これ食べていい?」
「ほんとお前こういうの好きだよなあ…」
「みんなが席に着いたらね」
「この量…いつの間に仕込んでたんですか…」
「企業秘密!ちょっとイタチ起こしてくるね!」

最後のひとりは、どうやらちゃんと自室で寝たらしい。
容赦なく部屋に入り、みんなにしたのと同じように毛布を奪い取る。寒いのが苦手らしい彼は、こういう時意外となかなか起きない。布団を引き剥がされているのに、びくともせず目をかたく瞑っている。手強い。

「イタチー、あけましておめでとう〜」
「…朝か」
「もうお昼どきだけどね。」
「…布団」
「だめ、起きて。みんなおせち食べるの待ってるから、早く行こう?」
「んー…」

やばい、腕を掴まれた、と思うのと同時に毛布ごとベッドに崩れ落ちて抱き締められる私。抵抗しようにも、着ている着物のせいで身体が自由に動かせない。ついでに首筋をべろんと舐められたりなんかしたらもう、私はひぃいと情けない声を上げて黙り込むしかなかった。

「…あ、あの、イタ、チ、さん?」
「俺は眠いんだ」
「いや、でも、あの、おせちが…」
「少し食べるのが遅くなったくらいで逃げやしないだろう」
「そうだけど…」
「料理していたせいで、ろくに寝てないんだろう?隈がひどいぞ」
「え、うそっ」

私の顔を見つめる彼の目が迫った、瞬間、塞がった口。
舌なんか入れられたらもう抵抗する力はするすると抜けて、同時に顔がカッと熱を帯びるのを感じた。や、でも、今はこんなことしてる場合なんかじゃないの、に。

「今から俺と寝るか、脱がされるかの2択だな」
「なっ…!なによその2択!認めません!」
「答えない場合は問答無用で」
「ね、寝ます!寝ます!」
「…俺と寝るんだな?」
「ハイ!」

脱がされるくらいなら大人しく寝ると答えておいて、イタチが寝たら抜け出せばいい。もうこの人を無理やり起こしておせちを食べさせるのは諦めよう。
そう思っていた矢先、キツく締められていた腹部の帯がふっと緩まるのを感じて慌ててイタチの目を見る。ニヤリ。ああ、こうなってはもう嫌な予感しかしない。

「ちょ、っと?」
「俺と寝ると言っただろう?」
「寝るって、まさか」
「ご想像にお任せする」
「や、あ!」
「静かにしろ、あまり騒ぐと部屋の外まで響くぞ」
「あの状況で寝ると言えば睡眠のほうでしょ!」
「その割に…濡れて」
「それ以上言ったら叩くよ!」
「…仰せの侭に」


謹賀新年


「おい鬼鮫、どうだった?」
「…先に食べてましょう」



20160110
あけましておめでとうございます!


   

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