変わらないもの
切甘
魅麗様へ 12800Hit記念
1人ベッドに力なく横たわる。今は何もする気が起きない。もう私も5年は待った、サスケだって無事に下忍になれた、私の使命は果たしたはずよ、それなのにあなたはなんで迎えに来てはくれないの?泣く力さえなく、風に揺れる白いカーテンを虚ろな目でぼんやりと眺めた。窓の端で黒い外套が揺れているのが見える。
「…誰か、居るの?」
窓の向こうに何者かの気配を感じ、私はその方向に問いを投げた。
するとそこから1人の忍が現れる。
ちりん、
鈴がついた編み笠
黒地に赤の雲が描かれた派手なコート
綺麗な細い指
紅い眼
「紅い…眼、」
「待たせたな、○○。」
「…イタチ…?」
気だるい身体を起こし、彼を見据える。彼は編み笠を外して床に落とした。綺麗な漆黒の髪、整った顔、あの頃と少しも変わらない。変わったと言えば、その色気と身長、実力。しかし私は彼がイタチだと実感しても未だ尚、彼に近寄ることが出来ずにいた。
この5年間、私は誰よりも何よりもあなたを思って生きてきたし、今でも変わらずあなたを愛している、
だけど
今のあなたは想像以上に私から遠く離れてしまっていた。
「…何をしに来たの…?」
「○○を迎えに来た。」
「どうして…もっと早く来てくれなかったの?私、イタチが居なくて寂しかった、今までずっと1人だった!」
私
の
中
の
私
は
も
う
、
あ
な
た
を愛してはいない―――?
「○○、」
「やめて、私の名を呼ばないで」
「俺は、」
「やめて!!」
「○○を愛している。」
優しく抱き締められる身体。
ここで私はようやく理解した。幾らあなたが強くなっていたとしても、どんなに遠く離れてしまっていたとしても、2人の気持ちは全く変わってなんかなかった。あなたの優しさは、未だ変わらずにずっと溢れていたんだね。
「イタチ。」
「なんだ?」
「これからはずっと、一緒に居てくれる?」
「俺はそのためにここへ来た。」
「うん、うん、…私も、あなたが大好き。」
「ありがとう。」
そう言って、私たちは泣きながら数年ぶりに甘いキスを交わした。
変わらないもの(誰しもが必ず持っているはずで、)
2009.3/14
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