溢れる思いを君に託して
甘
紅子へ 相互記念
今日は晴天。
○○は暁メンバー全員分の洗濯物を籠に詰め込み、屋上のベランダへと上った。爽やかな風、暖かい陽気に包まれてなんだか心地好い気分になる。その清々しさに彼女は思わず両手を大きく広げて伸びをした。
「んぅー!今日は絶好の洗濯日和ね!」
ぱんっ!と音を立てて洗濯物を風にたなびかせ、○○は満足そうに微笑む。
と、そこへイタチがやって来た。
「…先客か」
「あ、イタチ、大丈夫よ、私は洗濯物干し終わったらすぐ降りるし。」
「…そうか。」
「今日は良い天気ね。」
「そうだな…」
あまりにも話が続かないために2人はすぐ無言になり、早くも気まずい空気が流れ始める。しかし意外にも、その沈黙をやぶったのはイタチだった。
「主婦業が大分身に付いてきたようだな。」
「…えっ?」
「最近は家事をやっているのをよく見かける。」
「だって、こういう仕事するのは私しかいないから…」
「それでも、やるのとやらないのとでは大きく違う。○○はきっと…良い妻になる。」
「…ありがとう…ございます…」
突然、突拍子のないことを言われて高鳴る心臓。
屋上に2人切りと言うだけでどきどきしているのに、意味深な台詞を言われて更に混乱する。
「…結婚…か」
「する予定はないの?」
「馬鹿言え、こんなところに居る身だ、出来るわけないだろう。」
「ですよね…」
「しかし、」
何かを言いかけたまま、イタチが私を見つめた。訳が分からず爆発しそうな心臓、火照る頬、思考回路が機能しない脳味噌をフル回転させて、私はイタチの綺麗な顔を凝視する。
「お前となら、しても良いと思える。」
「っは、」
「○○は俺と同じ境遇に居るから、この立場への理解もある。更に家事が出来るし料理も美味い。…それに、」
○○は俺のことが好きだろう?
次の瞬間重なった唇に、私は溶けた。
溢れる思いを君に託して(私の全てをあなたに捧げます)
2009.3/1
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