「私が死んだら気付いてくれる?」
旅立つ準備をしているダイゴの背中へ何気なく思いついた言葉を投げかけてみた。昨日シンオウから帰ってきたばっかりなのに、今度はイッシュ?とかいうところへ行くらしい。ホウエンよりうんと都会らしいそこの知名度はここでは低い。もそもそ動くダイゴの背中からは返事がない。
「だってダイゴはまた他の地方へ長期滞在。じゃあ私が死のうが浮気しようが何しようが分からないよね。帰ってきたら刑務所なんてこともあるかも」
法に触れるようなことはしないけど。あくまでものの例えさ。すっかり温くなったホットミルクを飲み干す。冷たくもなく温かくもないミルクは正直得意じゃない。
「そうだ、ミクリくんと遊びに行こう。ミクリくん確か今度の昼は暇してるって言ってたな、うんそうしよう。わーい予定決まったやったあやっ」
たあ、で引き攣る。ひくひく動く私の口元、情けない。ようやくダイゴが振り向いたから怒ったかなーと思ったのになんだって笑みを浮かべている。
「なまえって本当に馬鹿で阿呆で不器用だよね」
ここまでの冒涜をされるような覚えはないんだけど。
「あのね、僕に会えなくて寂しいんなら寂しいってそう言えばいいんだよ」
スコープ片手に嬉しそうに破顔一笑するダイゴの憎たらしいことといったらこの上ない。ニコニコーっと目尻を下げたダイゴだけを見ていたら本当にこのホウエンのポケモンリーグチャンピオンなのか疑うところ、というか信じられないだろう。
じゃあ旅なんかするのやめてよ。喉まで出てきた言葉を唾と一緒に飲み込んで、ただ一言「お土産忘れないでね」とだけ呟いた。


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