7 輝く星のような




あの日から、私と赤司くんは廊下ですれ違ったら挨拶をする程度の関係になった。と言っても、それ以外に話すことは全くないのだけど。
毎日一回以上は彼とすれ違うから、いつも笑って挨拶をした。その度にクラスの子には羨ましいと笑われた。
なんで?と聞いても、え?!なんでもなにも、あの赤司様だよ!の一言。あー、確かにすごい人だったなぁ、とは思ったけれど、そんなに仲がいいわけでもなく、ただ挨拶をするだけの関係なのに。



そして、そんなある日、放課後教室に残っていると、誰かが扉を開けて入ってきた。
誰が入ってきたのか気になりそちらに視線を向けると、そこには夕陽に照らされて輝く赤司くんがいた。

「あ、赤司くん」

「ふふ…中川さんか、またお菓子に導かれてきたんだけど」

「ええ?!えっ!!」

驚きのあまり、私は、ガタンと音を立てて椅子から立ち上がってしまった。それを見た赤司くんはまたお腹を抱えて笑っているし、恥ずかしさで顔が熱くなった。

「あ、あの…よかったらそのお菓子あげるので、笑わないでください……」

「え?くれるのかい?……っふふ…はは」

そう言って、先程より更に笑う赤司くん。恥ずかしくて恥ずかしくて堪らない。
大体、なんでお菓子がまた落ちて……


ころん


そう思い下を見たとき、私のポケットから飴玉が落ちていった。ああ、そうだった、ポケットにいれてたんだった……。

はぁ、溜息を一つ吐いて飴を拾おうとする。しかし、私が拾うよりも先に、赤司くんがその飴を拾った。

「はい、ゴール…ふふ…」

「もうやめてください…はずかし…」

「やっぱり面白いね、中川さん」

私が恥ずかしくて下を向いていれば、彼はそうやって拾った飴を自分の口へと入れた。苺味かぁ、甘いな。等と呟きながら、私が座っていた前の席へと座る。
そして、私の書いていた日記へと目を移した。

「今日は日直か」

「あ、はい」

「へえ、じゃあ、終わるまで待ってる」

「え?」

「時間も時間だしね」

そう言って笑った赤司くん。優しいのか優しくないのか分からないな。なんとなく外を眺めていると、その日も綺麗な夕暮れ色だった。そのあとに赤司くんの髪に目を移した。

やっぱり、お揃いだ。


*

「今日はありがとうございました」

「俺は何もしてないが」

その返事に、お菓子を拾ってくれたので、と言えば、なんだそれは。と笑われた。でも、家まで送ってくれたし…。
そう思い、鞄から少しお菓子を取り出して、彼の手に渡した。家まで送ってくれたお礼です。と告げて。すると彼は優しく微笑んで、ありがとうと言った。

綺麗な夕日をバックにそう言った赤司くんは、とても綺麗だったと思う。あまりに綺麗過ぎて見とれていたら、じゃあ、と赤司くんは帰って行った。

その日はなんだか、不思議な気分だった。


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