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  ホラーちっくな再会を


高校に入って初めての秋。赤司くんとは当然だけど、高校が離れた。試合では会ったかな、でも、それ以外では会えていない気がする。会いたいなぁ、なんて考えていたら、赤司くんからメールが届いた。

To 千尋
From 赤司くん
件名 文化祭
こんばんは。夜遅くにメールをしてしまってすまない。
実は来月の20日と21日に、僕の高校で文化祭がある。こんなことを行っても、千尋は来れないだろうけど…。笑
でも、もし来てくれるなら楽しみにしているよ。因みに僕のクラスの出し物はお化け屋敷らしい。
じゃあね、おやすみ。


「あっ!文化祭っ………」

どうしよううううと頭を抱えてみるも、京都に行くお金などない…と思う。いや、もしかしたら、と思い貯金箱と財布の中を見てみた。

チャリン……

あったのは、510円。こんなお金じゃ、京都に行くなんて到底無理だ。最悪。最近ちょっと遊び過ぎた気がする。過去の私ほんと馬鹿!と悪態をつきながら、明日考えようと思い、寝た。


*


「くろ、黒子くん……」

「どうしたんですか、白澤さん」

「赤司くんの高校の文化祭に行きたいんだけどね、お金がないの………」

「そうですか…その文化祭はいつなんですか?」

「来月の20と21…」

なるほど、と考え出した黒子くん。何かいい案でもあるのかな、と思った時、後ろから火神くんが歩いてきた。

「黒子ー、白澤ー」

「あ、火神くん」

「2人で何話してんだ?」

「どうやって赤司くんの文化祭までにお金を貯めるか、という話です」

へえ、と言った火神くん。黒子くんもそうだけど、火神くんもいい考えがあるのかな?何かいい方法ないかな?と尋ねてみれば、嬉しそうな顔で、こう言われた。

「じゃあ、バイトすればいいじゃねーか!ちょうど俺達も文化祭の準備で部活ないんだし、時給高いバイト探して金貯めようぜ」

「僕も同じ事を考えていました、賛成です」

「た、確かに………!」

それから3人でどんなバイトをするか話し合い、明日、そのお店に行くことになった。


*

働くことになったのは、お洒落なカフェだ。丁度人手不足らしく、時給を上げて、店員を募集していたからだ。中に入ってみて、まず思ったことは、お店がすごく綺麗…!パリとかにありそうな落ち着いた雰囲気で、静かにクラシックが流れている。おまけに制服も可愛くて、時給も高いなんて、こんなにいいバイトは他にはないだろう。

「今日から入る火神だ…です、よろしく…っす」

「同じく黒子です、宜しくお願いします」

「私は白澤です、宜しくお願いします」

3人同時に挨拶を済ませると、 それぞれ仕事を割り振られた。料理が得意だと話した火神くんは、厨房へ、唯一の女の子の私はホールスタッフへ、影の薄い黒子くん(失礼だけど)は、食器洗いへ。じゃあまた後で、と言って、それぞれのレクチャーを受けるべく、先輩のところへといった。

「貴方が白澤さん?可愛い女の子でよかった…!」

「は、はい!白澤です!宜しくお願いしますっ」

「そんなに改まらなくていいのよ?年もあまり変わらないだろうしね。因みに私は相崎ゆりの、 よろしくね!」

私より背の高い、綺麗なお姉さんと言った感じの方だった。怖い人じゃないといいな〜と思っていたけど、すごく明るくて優しそうな人でよかった。

その日は色々と教えてもらったあと、実際に仕事をして、帰った。


*

それから1ヶ月後


「や、やったぁ…京都往復分のお金と、遊べる分のお金ができたよっ…!」

「お疲れ様です、白澤さん、よかったですね」

「よかったなぁ、白澤!」

「ありがとう〜」

「俺も赤司の高校の文化祭行ってみるかな」

なんとなくそういった火神くんに、そうですね、と黒子くんも言った。皆で一緒に行く?と言えば、そうしようぜ!と言われ、3人で京都に行くことになった。

家に帰って、赤司くんに報告のメールを送らなきゃ……。

To 赤司くん
From 千尋
件名 文化祭、行けるよ!
赤司くん、久しぶり〜。実は、3人でバイトをして京都に行く分のお金を貯めました!なので赤司くんの高校の文化祭にも行けそうです!

送信っと………。それから数分して、赤司くんから電話がかかってきました。少し驚いたけど、通話ボタンを押した。電話越しだけど、何ヶ月かぶりに聞く赤司くんの声。電話越しだと、その声もいつもより少し低く感じる。

「もしもし、千尋?」

「あ、赤司くん…」

「もしかして、緊張してる?」

うん、と答えればクスクスと笑わられてしまって恥ずかしい。いつもそうだけど、赤司くんはよくそんな風に私のことを笑う。

「可愛いね」

「なっ……やめてよ、恥ずかしいよ…」

「好きだよ、千尋」

「私も好き…………」

知ってる、と笑う赤司くん。そんな赤司くんの声を聞いて、離れていてもやっぱり赤司くんは赤司くんだなと思った。

「文化祭で会えるのを楽しみにしているよ」

「うん、とびっきりお洒落していくもん」

「ふふ、それは僕のためにかな?」

「勿論…!」

「じゃあ僕もとびきりのお出迎えをするよ。楽しみにしておいてね、おやすみ」

「うん、おやすみ」

少し寂しかったけど電話を切って、ベッドに倒れ込んだ。もうすぐ赤司くんに会えるんだと思うと、心がふわふわする。楽しみだなぁ、と目を瞑って、赤司くんを思い浮かべた。

*

そして当日。3人で待ち合わせをして、新幹線へと乗り込んだ。修学旅行以来の京都、大会以来の赤司くん、楽しみなことが多過ぎる。頑張ったおかげで、一泊する分のお金もあって、一日目が終わったあとに、赤司くんが京都を案内してくれるらしい。本当に、楽しみだなぁ、とにこにこしていると火神くんに声を掛けられた。

「そんなに赤司に会うのが楽しみなのか、顔に出てるぞ」

「えっ、そんなにわかる?」

「ああ、顔に幸せって書いてるぞ」

それはそれはお恥ずかしい。恐らく赤くなっているであろう自分の顔を覆った。



京都に着いて、洛山高校へと向かう。赤司くんがわかりやすい地図を書いて、写真をメールで送ってくれたので、迷うことはなさそうだ。
流石赤司くん、抜かりないなぁ…とふわふわしていればまた火神くんに声を掛けられて、道を歩いた。

「ここが、洛山高校……すごい…」

「白澤さん、赤司くんに連絡しなくていいんですか?」

「驚かせたいからこっそりね…」

そう言って、赤司くんに聞いた赤司くんのクラスへと向かう。赤司くんが言っていたようにお化け屋敷をやっているらしくて、覗いていればどうぞどうぞ!!と中に入れられてしまった。お化け屋敷苦手なのに……震えながら身を小さくして、黒子くんと火神くんの後ろを歩いた。

「赤司くん………どこ……?」

「どこにいると思う?」

「あ、赤司くん!?」

どこからか赤司くんの声が聞こえて、キョロキョロと周りを見渡してみるも、真っ暗で何も見えない。

「赤司も中にいるんじゃねーの?歩いてれば会えるだろ」

「そうだね……」

そして道を歩いていると………

「きゃぁあああぁあああああおばけえええええええ!!?!?!」

突然何か冷たいものが触れて、怖がるあまり走ってしまった。少し走って、止まった。そういえば、黒子くんと火神くんはどこだろう?

「く、黒子くん…火神くん……どこ?」

1人ぼっちで、震えながらそう言ってみるも返ってくるのは静寂のみ。どうしよう、さっき走ったせいで1人になってしまったらしい。

「ひ、1人とか無理だよ……」

必死に涙を堪えて、その場に立ち尽くした。いつか黒子くんと火神くんもこの道を通るよね、それまで待っていれば大丈夫………。

ひたっ…

その時、不意に私の首に誰かの手が触れた。えっ、まさか…………サァーーーっと血の気が引いていった。しかし、1人のせいで先程のように走り出せず、怖さのあまり腰が抜けてしまった。
がくりと倒れそうになったその時、私の首に触れた手が流れて、私は誰かに抱き締められた。
ふわり、と香る懐かしい匂い。大好きな匂い。このいい香りはきっと………。

「すまないね、少し脅かしすぎたかもしれない………怖かっただろう?」

やっぱりそうだ、この声は赤司くんの声だ。その優しい声についに堪えていた涙が溢れた。

「っあ……あかしくん……」

「大丈夫だよ、一緒に出ようか。それとも、後少し二人でここにいる?」

「ちょっとだけここにいる………」

そうして振り向いて、赤司くんを抱き締めた。その暖かさが懐かしくて、すごく安心した。少しの間、抱き締めあって、落ち着いた頃に赤司くんに声を掛けられた。そろそろ出ようか、と言われて、うんと答えれば、赤司くんに手を繋がれて、一気に恐怖心が消えた。

「や、やっと出れた………」

「ふふ、楽しかった?」

「怖かった………って、黒子くんに火神くん!?」

外に出れば、当たり前のように黒子くんと火神くんがいた。どうやら私を探していたら近道の方の出口を進んで、出てしまったらしい。その後にクラスの人に事情を聞いて、赤司くんがいるから大丈夫だろうと考えたんだとか。
赤司くん、全てサプライズだったんだね……赤司くんの手を握ったまま赤司くんを見上げれば、いつものような優しい笑顔が返ってきた。

「怖かったから………」

「ごめんね」

「やだ……」

そう言ってふざけてみれば、これで許してよ、と言われ、頬にキスをされた。暫くの間、何が起きたのか分からずに固まった。

「あああ、赤司くんのばかっ……!!」

「許してくれないならもう一回する?」

そう言って可愛らしい笑みを浮かべた赤司くんに、もう一度ばか!と言った。







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