7号室の眼鏡C

目の前に死んだはずの麻子がいる、夢のかと何度も目をこするがやっぱり夢ではなかった。

くるくると回って見せる彼女はいつも通り明るかった。



細川「麻子なんだよな…?」



みわこ「うん、もしかして偽物なんて思った?」



細川「…そんなこと思ってない、けど…。」




あまりにも突然で言葉を失った俺は変わらない彼女に安堵した。

そりゃあホラーかって思ったけど…、やっぱり嬉しい。

みわこ「…これ、ありがとう。」


細川「ん?…あぁ。」



見せられた彼女の指には棺と一緒にいれた箱の中身がついていて不思議な気持ちになった。



細川「届いたんだ…、とっても似合ってる。」



みわこ「ふふっ、ありがとう。ケンケンもつけてくれてるんだよね?」


細川「あぁ、眼鏡。大切にしてる。」



みわこ「そっか…、あとごめんね。楽しみにしてたのに…。

あっ、そうだ!


彼女、できた?それともまだ?」





しんみりしてたはずなのにケロッとした麻子の口からとんでもない言葉が出て吹き出した。



細川「ぶはっ、まだ忘れらんないのに作れるかよ。」


みわこ「え〜!?いつまで引きずっているつもりなの?

もう、死んでるんだよ。」



今度は何故か怒っている。



細川「…麻子、俺は!」



みわこ「私だってずーっと一緒にいたかった。ケンケンが…、健の事が大好きだったのに…。」




怒っていながら彼女は悲しそう顔をして俺は困った。

こんな時、なんて声をかけたらいいんだろ…。



みわこ「去年も一昨年も泣いてくれてたよね、今年は笑って帰ってほしい。」



細川「ずっといたのか?ここに!?」


みわこ「うん…、ケンケンがこの道通るたびに見てたよ…。」



細川「そっか…、なんで今になって…。」



みわこ「わからないけど…、言いたかったから私の事…忘れて。」


細川「え!?なに言って。大切なやつを忘れるなんてできるかよ!?」




みわこ「それだけで、もう十分だから。」



指をかざして笑う彼女がどんどん薄くなっていくのがわかる。



細川「…麻子?」



みわこ「ごめんね…、もう時間ないみたい!
とにかく新しい彼女、見つけて幸せにってね。」



細川「おい、待てよ!」


じょじょに消えていく麻子に手を伸ばすが触れる事なく手は空振りする。





みわこ「バイバイ、    。」


細川「…え!?」



最後の言葉が聞き取れず俺はしばらく、動く事ができなかった。


気づいた時には少し夕日が傾き始めてた。

帰り道、とぼとぼと帰る。

そして曲がり角、俺は1人の女の子にぶつかってしまった。



細川「ごめん、大丈夫?」



だけど、女の子は無言で行ってしまった。
怪我はなかったようだったけど…。



*****



鯉恋荘に帰ってきた七海さんを俺は、仕事の依頼をしたくって待っていた。



金沢「おかえり〜。」


細川「あぁ、清十郎か…。なんか用か?」


金沢「まぁ、実は今度の撮影でいつものスタイリストさんがどうしてもこれないって。」


細川「ふ〜ん、それで俺に白刃の矢が当たったということか。」



どことなく元気がない七海さんだったが、快く受けてくれることになった。



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