07.にたもの同士(1/5)
電話が切られてしまった名前に危機が迫っており、酒口典子は顔を引きつりながら見ていた。
「こんなところで何しているの?どうしてもっていうから入れてあげたのに。」
『あなた達が熊谷瞳さんと井ノ田毅さんを殺したのね、恋人だというのに…。』
「何を言っているの?あの人は私の大切な人よ。」
「瞳は他の男とできてたんだ、まさかその男が…。」
それは誤解だと名前は真一文字に結んだ酒口典子に言うが頑なに否定する。その手にはナイフが。
「誤解?捨てられた私達、親子が2人を殺したって言ったわね?どうやって殺したっていうのかしら。あの子は自宅で発見されたんでしょう?ねぇ、幸人。」
「あぁ…、不審な人物の目撃情報もなかったと…。」
『たしかに瞳さんは自宅で発見された、けど…、本当の殺害現場はここ。』
稽古場であるここだと示した。
「ここ?どうして!?あの子は浴衣を着ていたのよ。だからってここだなんて。
不思議でならないわ。」
『えぇ、本当に不思議ですよね…。この事は報道されてないのに。』
「…っ!?」
『どうして知っているんでしょうね?』
にっこりと笑った彼女に真っ青になった典子だったがそれもつかの間だった。
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