※捏造
※日高と秋山
※適当ストレイン発生
「ほら、日高。あれが対戦相手の秋山さん。」
大学に入った日高が入った高校からの特技である剣道のサークル。そのサークルは高校の部活の先輩並に活動があり、親交のある他大学との親善試合が行われていた。その試合に初めて出た日高の対戦相手はエースなのだという秋山だった。纏う雰囲気は柔らかな花弁みたいだった。先輩からは油断するなよ、と念押しされたが、試合になると彼を感じる雰囲気はがらりと一変する。太刀筋が、鋭く尖る様だった。
「其処まで!」
勿論、試合にはあっさり負けた。礼をして防具を外すと秋山は微笑んで良い試合だったな、と握手をしてくれた。その優しげな雰囲気だとかに日高は憧れを抱いた。その後のサークル活動での試合で何度か対戦するものの、一度も勝てた試しは無く。それは、秋山が大学を卒業するまで続いた。その頃に日高が抱く秋山への憧れは、どういうことか劣情とか恋とかそう言った部類へと昇華していた。だが、彼のその後の行方を知る事は出来ないでいた日高は彼のいない大学生活を剣道の試合に注いだ。その余りある熱意は何故かインカレや、名のある試合で賞を貰う位であり、卒業後の進路で安定した公務員に採用された際に賞歴で目に止まったらしい担当者にストレイン担当部署として配置された。其処で、別部隊にいた秋山を知った。それを知ったのはたまたまであった。新しくなった青の王と共に作られた部署に纏めて異動になった名前の中に秋山の名があった。珍しいからすぐにわかる。氷杜なんて。同じ部署になって、嬉しいやらで日高は心を隠した。普通の部下として、接した。秋山は日高の事を少々デスクワークの苦手な手のかかる部下としか思っていないようであった。その名前を見た時、日高はついつい自分の頬を抓るほどであった。思い描きすぎて、ついには妄想まで?秋山は秋山であった。平常時はほんわりとしていて(でも仕事はきっちりしてる)、だが一度セプター4の仕事と認識すればサーベルを持つ雰囲気はがらりと変わるのだ。一緒の職場というのは嬉しくもあり辛くもあった。そんな中でストレインによる事件が発生した。現場に向かう中で秋山がストレインの攻撃を受けたとタンマツから聞いた日高は急がないと、とサーベルを握り締めた。数分後に現場に到着し、車両から向かう最中、ドンという爆発音に、どうやら事故だと認識する間も無くタンマツよりストレインがその爆発に巻き込まれ死亡したと連絡が入り、何も言えない状態で事件は終わりを迎えた。
「秋山、大丈夫か」
「伏見さん。心配をおかけします。日常生活には支障はなさそうですが、色の識別が出来ないようです。」
その言葉に伏見はチッ、と舌打ちをし、後ろに控えていた弁財に過去の事例を探し出せ、と告げた。弁財に言ったという事は基本的に隊員に対しての通告である。ハッ、と弁財が返事をした。
「伏見さん、例の事件の事例が見つかりました。メールしておきました」
「そうか」
秋山の分の仕事を受けて伏見の期限は下降スレスレである。その中、空気を読んでか比較的穏やかな時分に日高が声をかける。カチカチと操作し、完結していたのかと聞いて行くとはい、という答えに伏見は文書をざっと見る。解除方に眉を顰める。恋の成就、と書いてあったそれにチッ、と舌打ちが響いたのである。何なんだ、この面倒な方法は。
「何でもいい。早く何とかして来い」
「そうは言いましても…俺には思い当たる節は無くてですねぇ」
病室で伏見は件の事例を報告し、早くそれを治せ、と告げた。言われた秋山は困った様に笑うだけである。兎に角何とかしろ、と伏見は言う。
「お前の書類の一手間が面倒クセェ。」
色の識別出来ない秋山の為、彼に見せる書類は太字だったりアンダーラインだったり一手間があるのであり、それがイライラする。だが、その書類の仕事をするのには流石に伏見も手に負えないわけで。はぁ、と溜息をつきながら伏見は出て行った。
「秋山さん、あまり深く考え込まないでくださいね。」
何か他の方法があるのかもしれません。そう励ましてくる日高は何回も秋山の見舞いにやってきた。笑っていろんな事を話す彼に秋山はホッとしていた。その見舞いが2週間目の頃だろうか。日高はふと、大学時代に秋山さんと対戦していたことあるんですよ、知ってましたかという話をしてきた。
「覚えているよ。まだ若いっていうのに目がきらきらしててさ、いいなぁって思ってて」
「俺の事を褒めてくれて。嬉しかったんですよ」
本当に有望な青年であった。それがまさかこんな場所で再会するなんて思わなかったから驚いたが。
「日高に会ってさ、安心したよ。変わっていないから」
「ええ?一応俺成長してたんすけど」
「違うよ。お前がお前のままだったからさ」
大学卒業付近で恋人に手ひどく裏切られた。だから、人間不信になっていた。ある程度の付き合いはするけれども。深くは付き合わないし、入り込まないでほしい。そう思っていた秋山に日高は現れて屈託のない笑顔とか変わらない姿に秋山はホッとしたのだ。ホッとしたように微笑む彼の笑みに日高は気づけば思いを吐露していた。それは受け入れる容量をとうに超えていたのかもしれない。
「…好きなんです。秋山さんが」
驚いた秋山の瞳が大きく開いたのを見て日高はごめんなさい、と告げる。そしてもう来ないからという。そのすり抜けようとした腕を秋山が掴んだ。日高は一介の隊士だ。有り体に言えば駒である。それは秋山とて。もう会わないなど。異動届けでも出すつもりか。セプター4という場所は特殊である。異動届けを出すには、自分が同じ職場の上司で同じ男を好いているので、一緒にいれないのでと、上司である宗像に説明できるのか?彼は個人のプライバシーは尊重するだろうが、本人に告げるだけで逃げ出しそうな彼の場合それはできないであろう。とするとこの場所を抜け出すつもりか。もう会わないのだと。そう思った瞬間、秋山の胸がツキンとした痛みを感じた。はっとして見下ろすとそこには青い光が溢れていた。青い?認識した瞬間視界が色づいていた。ぽろりとこぼれた涙にそうか、と秋山は理解する。
「秋山さん?痛いんですか?」
「ううん、違うんだ。日高、俺は今お前が愛しいって理解して泣いているんだ。好きなんだ」
だから、いなくならないでくれ。
そう言って彼をぎゅうと抱きしめて秋山は微笑んだ。
色のついた感情
END
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