※DIABOLIKLOVERS
逆巻シュウと逆巻スバル
※幼少期捏造
※腐向け
※未プレイ
明るい未来が約束されているやつだと思った。逆巻家の長男だという男は明るい金色の髪にサファイアの様な青い瞳できらきらと笑っている、自分とは違う人間だと、そう思っていた。
ベアトリクス、という人物がどういうものだかは知らないけれど、屋敷内にちらほらと見かけていた姿はどうしても子供に厳しいながらも、それでも子供を慈しんでいる姿。自分の母とは違う、姿。
母は、美しい。そう形容するほどの人物だ。これは贔屓目にしてもそうだと思う。実際その美しさに惹かれたクソ親父はクリスタとう白薔薇を陵辱し、その結果発生したのは自分という望まれないもの。
「ー近寄らないで!穢らわしい!」
そう罵声を浴びせられた時、知った自分の穢らわしさに、自分の親の匿われている屋敷を訪れるのをやめた。そして、ほかの兄弟とも触れ合いも極力避けるようにして自分の棺桶に籠るようになった。
それでも、母をこのがんじがらめな屋敷から出してあげるという願いは彼女が生きている間にでもしてあげなければならないと、思う。それができるのは自分だけで、それが彼女にしてあげれる所謂親孝行なのだ。
その日も、ヒステリーを起こした母の面倒を見て、それがこれからも続いていくのだと思ったら涙が込み上げてきて、自分の棺桶に向かうまでにそれは決壊して庭の開けた場所で涙がぼろぼろとこぼれてきた。どうせここには誰も来ない、だから大丈夫のはず。そう思っているとふわふわと柔らかいそれが近寄ってきて、それは白いウサギで動物が自分に近寄っているのだと気づいて安心したら、涙がぼろぼろと服を濡らしていた。
「どうしたの、スバル」
「っ!」
振り向けば其処には長男であるシュウがそこに立っていた。手には色とりどりの薔薇がある。心優しい彼はきっとそれを母親にあげるのかもしれない。
「な、んでもねー!」
「クリスタさん、具合悪い?」
「、っ、お前に何がわかるんだ!」
「ごめんなさい。でも、泣くのは悲しいから、泣かないで。」
きっとこのウサギも君が泣いているのを心配しているから、だから笑って。スバルが笑うのはきれいだと思うよ。そう言って少しだけ背の高い彼は頭をなでてくれた。それが一番古い記憶のシュウ。
それから数年、彼とは接点が無かった。そして話すことも無かった。久し振りに顔を見た時には彼は大分変わっていた。こんなに投げやりな奴じゃなかった。どうかしたのかと傾げたくなる程。けれど、それはきっと誰しもあるものなのかもしれなかった。あの三つ子の母が死んだのと同じく奴の母も既に死んでいるのだ。それがあるのだろうかとも思いつつも自分には関係ないことだと、殊更に自室に篭る様になった。
そんなある日の事だった。クソ親父からの呼び出しで城に行って詰まらない話を聞かされて爆発寸前ながらも部屋に戻る最中に屋敷のエントランスに転がるものがあった。普段ならば目もくれないそれは長男のシュウだった。気怠げな彼はトイレだろうが通路であろうが眠気が襲ってくれば忠実に其処で眠るのだ。きっと今回も眠りたくて其処で寝ていたのだろう。目障りではあるがそれが通行の邪魔をしているという訳でもない。どこぞのお節介とは違うのだ。次男は彼を穀潰しと罵りながらも最終的には彼の世話を焼いているのだ。それを言っていた三男は次男の反撃を受けていたが。それに簡単にくたばる程ヴァンパイアは柔ではないのだ。なので素通りしようとした。けれど、がしりと腕を掴まれて別の部屋へ連れ込まれてその弾みで倒れ込んだ。咄嗟の事で、重力に逆らう事が出来ずに絨毯の上に寝転ぶ羽目になった。何なんだ、そう言い返そうとして振り返った時に衝撃が来た。その正体は確認しなくても分かる。シュウだ。シャカシャカとイヤホンから漏れる音など彼以外ない。シュウが乗りかかって来たのだ。いい迷惑だ。先ほどまでエントランスで寝転がっていたではないか。何だって自分がこんな目に、と文句を言おうとして様子がおかしいのに気が付いた。目が、…淀んでいる。何か別の事を見ているのだろうか?
「おい、シュウ…ッ!?が、ッは…!」
声を掛けたその最中、シュウは突如首に手を掛けてきた。いくら人間よりも丈夫だとは言え、呼吸を止められたらヴァンパイアと言えども苦しくなる。心臓がどくどくと早く鼓動する。何とかその腕に手を掛けて剥がそうとするものの、すればする程その力は強くなって行く。この野郎、と力を込めて近くにあったらしい机を力一杯引き寄せてやつの頭にぶつけてやる。そうすれば、解放するだろう。
「ぐっ、か、…お前も、いなくなるのか。だったら、俺が終わらせてやるよ」
ぐぐ、と力が込められて、いよいよ見えている景色が黒く淀んでいく。酸素が足りていない。もう、近くには何も、ない。このまま兄弟に殺されるのか。そう考えているうちに意識はどんどん闇へと引き込まれていった。
「ー…る、…ばる。」
気づけば其処は、いつもの自室だった。どうやら自分は生きているらしい。別に死んだとしてもいい。だが死ぬとしてもそれはあの親父をどうにかして、母をこの家から解放してからだ。他人から与えられる死なんてまっぴら御免だ。あたりを見回すと其処には、レイジとシュウが自分を見下ろしていた。
「おや気づきましたか。もう少し起きなければ棺桶に放り込んで火葬する事になりそうでしたよ」
「…うぜぇ、なんだよ、それ。笑えねぇんだけど」
「笑うも何も本気ですが。この穀潰しが、あなたの首を圧迫し、貴方は酸欠により意識不明になったのですよ」
玄関に貴方の荷物が置いていなければ貴方は本当に殺されていてもおかしくなかった様ですよ。アヤトが物音を聞きつけたのですから、と言う言葉にそう言えば城へは学校から直接行って鞄もそのままだったのだと思い出した。
「暫く安静にしておきなさい。ついでに言えば破壊もしないでください。」
その為にシュウを置いていきます。そう言い残しレイジは部屋を後にしてしまい、残ったのはシュウと自分だけになってしまった。非常に気まずさを感じつつもじろりと彼を見ると違和感を感じたがその正体に気づいた。首にしているチョーカーの様なものがない。イヤホンもしていない。珍しい。
「ー…スバル、大丈夫じゃないよな。悪い」
「別に。お前何か様子おかしかったし。カナトとかだったら骨の一本でも折ってるけど俺は丈夫だから平気だし」
「…けど、喉痛かったんだろ。」
するりとのど元を撫でられるとひりとしたものを感じる。あれから時間が経過しているけれど痛みがあるのはもしかしたら相当の力が掛かっていたのかもしれない。鏡がないから分からないがー。
「痕、残った。」
「別にユイみたいに女じゃねぇからそんなの関係ないだろ」
何しろ、自分は暴走する固まりだ。いつでもけがをして、ヴァンパイアとしての能力故にそれはすぐに消える。
「…あと、一つ、お前に謝らないといけない。」
ふわりと、風が流れ込んで来て何だと見ればいつの間にか窓が開けられていた。其処から香るのは薔薇の強烈な甘い匂い。ちらりと空を見れば満月ではないが丸に近い月が出ている。それを見た瞬間、自分の中で渇きを感じた。何時も程は強くないが。何故だ、と思うものの、シュウの話をと意識を向ければシュウはいつの間にか、背後に回って抱き寄せて来た。二人分の重みでベッドがギシと悲鳴を上げる。
「お前が喉の渇きを訴えてるのは、月の所為でも薔薇の香りでもない。…俺が、お前の血を啜ったからだ」
「は?」
「無意識だった、けど、何か大切な奴が誰かに殺されそうに見えて其奴を殺すつもりでー」
「意識が朦朧としてた時にお前はそんなもん見てたのかよ…まじうぜ」
「…だけど、急に喉が渇いて気づいたらお前の血を飲んでたから、お前は酸欠と貧血で寝てた」
アヤトが見つけた時もまだシュウは意識を戻していなかったらしく、ユイの血で力が出ていたアヤトが引き離した時、自分の顔は何時もの倍以上血の気が無かったらしい。
「…だから、飲め。スバル」
「は?」
「ほら、ナイフ」
「お前何言ってんだ、ああ?」
「ー血を飲んだくらいじゃ謝るくらいでいいとか思ったけど、流石に弟を酸欠状態にさせてたなんてなったら血くらいあげないとまずいだろ」
「…お前がやれよ。俺はー別にいい」
「分かった。こっち向いて」
「え、なんっ、んっ、ぅ!」
重なるのはシュウの唇でそこから流れてくるのは彼の血だ。暖かい、人よりは冷たいけれどそれでも自分よりは暖かい血潮。それが流れ込んでくる。それと同時に喉の渇きも収まっていく。どれだけ、この耄碌している兄は人から血を啜ったんだと言いたくなるものの、暫くはその血を飲む。
「ん…ッ、」
「スバル、口の中切ってたのか?甘いな、」
「てめ、誰のせいだよ」
「あー悪い。これでも今最大限に我慢してるから勘弁してくれよ」
耳元でお前を、喰らいたいくらいなんだけど、という低温の声に体が泡立つ。なんだ、今のは。
「いい事を教えてやるよ。スバル」
「シュウ…?」
「お前と最初に会ったあの時から俺はお前を好きだったんだ」
だから、今の血だって、唇にしたのは態とだよ。そう笑って再度、重ねて来たのだった。
策略的な行為
END
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