仁王と金太郎
※負け組合宿中
※捏造設定あり
負け組、と言われた事は何と無く慣れて来た。全国区覇者、立海とは言え、個人差は出るもので、ダブルスのパートナーから、逆にこっちが詐欺にあうとは、まだ力不足なのだろう。今日も、三船コーチの指示の元、奴等の実力に追いつく為、地獄の様な特訓をこなす。が、今日は様子が違った。いつものラリー500本連続を始めるその時に、コーチが歩き出した。そして、ある人物の前で歩みを止めた。その人物は、大阪代表の四天宝寺のルーキー、遠山金太郎。赤い髪が特徴的な少年。しかし、実力はあの越前リョーマといい勝負をするだろう、と見ている。どうしたんだと、周りの奴が見ている中、コーチは足元に屈んだ。その足元には少し赤い腫れが見える。くるりと振り返った彼はびしりと自分を指をさした。
「おい、お前。こいつの治療をしろ。」
ぽいと、投げられた包帯と湿布に遠山。つまりはこの野生児がテニスをしないように見張れということかと、溜息をつく。
「そこの二人だけは今日だけは免除してやる。だが、明日以降、その分やってもらう」
去り際にそんな言葉を耳にしながら二人で木陰の岩場に腰を降ろす。
「ほれ、足を出してみんしゃい」
出された足は赤く、そして熱を持っていた。これでは走るのも辛いはずだ。よく平気な顔をしているものだと、そいつの足に湿布を巻きながら観察する。
「あーあ、コシマエとまた差ぁ広がってしまうわ」
詰まらなそうに言うそいつに患部をぺしりと叩いてやると、痛いやないかと喚く。
「痛いだったら越前とやるのは無理ぜよ」
治してから追い掛けるべきじゃ。あの越前もそれを望んでるじゃろ、と言えばきらきらと眩しい瞳を向けられて、後ずさる。
「そうか?なら、我慢するわ」
「おまん、越前と試合するのが好きなんじゃなぁ」
この二人が非公式でも試合を幾度とやり、それでも結果が付いていないというのは知られた話だ。しかも、この合宿でも最初の勝ち残りの時も、この二人は高校生に戦いを挑んでいたという話だ。越前は言わずものがな、あの徳川とかいう高校生と。遠山は鬼と、やりあったらしい。しかし、パワーでも指折りの桃城ですら、歯が立たなかった相手から本気にさせる事からこの少年の能力の未知数を感じる。
「なぁ、自分ところの部長、どんな奴なん?」
面倒を見られるのを理解しているらしい彼は話しかけてくる。
「ほぉ、幸村ん事興味があるんか?酔狂じゃのう」
「強いんやろ?」
にやりとイタズラ好きの様な顔をする。天性の戦い好きか。はぁ、溜息を着く。一応、敵に部長の事を教える訳にはいかないだろう、と言いたいがはっきりと言えるほど彼を知っている訳ではないのも事実だった。
「そうゆうおまん処の部長はどうな奴なんぜよ」
「白石は、優しい兄ちゃんみたいな奴やで!」
強いけど、毒手は勘弁やわと言う彼からは嫌がる素振りは見えない。ころころ変わる、その笑顔が可愛いと思う自分は可笑しいのだろうか。
これが一目惚れっちゅー事かい?俺もまだまだぜよ。
地獄の特訓から戻って来た時に部長の彼に遠山は可愛い奴じゃのうと言ったらまた虫が出来てしもうたかと、溜息ながらに言われるのは別の話。
END
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