※黒黄
※パロ
※青←黄だけど最後は黒黄になる予定
※心の広い方だけ見てください
◎設定の関係で青峰ほか数名が年上
俺は小さな頃から輝かしい戦歴を残したバスケットプレイヤーの背中を見て来た。別に親父の背中を見て育ったとか、そうゆうんじゃない。親父は息子の自分が言うのも何だけれど、かなりベタ甘だ。けれど、ちゃんと母親も愛してる優しい父親だと思う。背中を見て来たのは隣の部屋に生まれてずっと暮らしている、青峰さんの息子の大輝の事だ。ずっと、その凄いプレーを見て、側で見て一緒にプレーしたくて見様見真似で触り始めた。だけど、改めて彼の凄さが実感されただけで中々難しかった。それにどんなに、頑張ったって大輝くん(俺はそう呼んでいる)とはずっとは一緒にいれない。だって大輝くんは自分より一年早く生まれていて…早い話が先輩なのである。けれど隣で行き来する、そんな事はお互いのコミュニケーションの様で楽しかった。まぁ、自分が携帯を持っていなかったからってのもあるのだけど。それに、ずっと一緒にいたい、もっと大輝くんの事を知りたい、なんて思って一つの答えに行き着いてしまった。男が男に懸想をしている事実。大輝くんは、粗っぽいけれどモテる。だけど男なんかに好きになられたらそれは迷惑以外の何物でもないだろう。だから、出来るだけ弟のような黄瀬涼太を演じたのだ。小さな頃から遊戯会とかでやって来たし、演じるのは嫌いじゃなかった。だからこそその想いを自覚して数年、ひた隠しに接していた。けれど物事には始まりと終わりが存在する。終わりがないものなどないのと同じく普遍は存在しないのだ。
家の近く(と言っても我が家+青峰家は集合住宅住まいだ)には公園と、隣にはバスケのコートがある。いつもは、其処に誰もいないのに、ダムダムとボールの跳ねる音がした。また、大輝くんがバスケの練習をしているのかとその音のした方を見てそして後悔した。見なきゃ良かった。その日、友達と別れた帰り道で見たのは、自分が恋をしている相手と、その相手のクラスメイトだという人のキスシーンだった。衝撃で持っていた鞄が落ちて、その音に反応した大輝くんが此方を見た。酷く目を見開いていた。辛そうな顔をしたのを見た瞬間に居た堪れなくなって走り出した。後ろで大輝くんが何かを言ってたけどそれに気を止める余裕は自分にはなかった。何で、と思ってそして胸が痛かった。
「涼太!」
こうゆう時に限って窓から叩いて入ってくるのだ。いつだってこっちからの時は歓迎されないような態度の癖に。けどやっぱり好きな人だから追い返すなんて事は出来なくて結局部屋に入れてしまう。慣れた様に入ってくる大輝くんは、いつもの定位置であるクッションに腰を下ろした。そして、バツが悪そうにして見てたんだろ、と言う。
「ごめん。なんか邪魔したみたいでさ?今後は気をつけるっス」
「あのなぁ、俺はそんなんしねぇよ!バスケだけでいいっつーの。」
大輝くんの一番を超えるものはない。けれど、きっと嫌じゃなかったのだろう。跳ね飛ばすとか、するだろう大輝くんは黙っていたのだから、つまりは少なからずそういった感情がクラスメイトの人にあったのだ。
「つーか、驚かないのか」
「男同士のこと?そうゆうのがあるの位知ってるスよ」
だって、自分もその部類にいる人間なのだからとは言えなくてじとりと大輝くんを見るに留まった。
すると、彼は何を勘違いしたかぽりぽりと頭をかきながら「彼奴と付き合う事になったからあんまり一緒にバスケしてやれねぇ」なんて言う。何だ、やっぱりお邪魔虫だったんじゃないか。
「良かったじゃん。あの人優しそうだし」
「確かに良は優しいけど涼太、俺はそうゆうので付き合うじゃねーんだけど、」
「悪いんだけどさ、俺も宿題あるからまた今度ねっ」
そう言って無理やり部屋の外へ押し出して、カーテンを閉めた。暫くは何か言っていたみたいだけど、諦めて戻っていった。本当は宿題なんて終わってた。馬鹿みたいだ、とぽつりと呟いた声は思いの外大きく染み込んで行くのだった。
最初にあの人を見たのは、大輝くんの部屋で遊んでいた時。忘れ物を届けに来たのだという彼は大輝くん相手におどおどしていた。それどころか、自分にすらも謝ってばかりの超後ろ向きな人だった。それに、呆れつつも笑っていたから不思議な人というイメージがあった。それから何度か遭遇していた。けれど、自ずからキスをする感じの人には見えなかった。当分大輝くんとは今までのようには出来ないと思った。
「昨日の宿題の後友達とは遊べたんですか?」
朝、教室に着いてほっと一息をついた時に声を掛けられた。後ろを向くと其処には黒子っちがいた。黒子っちは、クラスの中でも読書好きだ。朝早くに教室に来て本を読むのが好きらしい。
「昨日はありがとうっス。…遊べなかったんスけど、のんびりしたっスよ。」
黒子っちは、そうですかと言いながら読んでいた本を閉じながら頭をポンポンと撫でて来る。ぽかんとしていると、彼はこうやると僕の家の犬は喜ぶんですけどと至極真面目な顔をして言う。
「俺は犬じゃないッスよっ」
「あぁ、すいません。何だか似てるものでつい」
それに、と彼は何だか悲しい目をしているみたいでしたのでと撫で続けた。ありがと、と言うと彼は少しだけ目を大きくしてそしていいえと言って頭から手を退かした。その直後にやって来たのは馴染みのメンバーである火神っちだ。彼は二年前に転校して来てからはずっと一緒だ。バタバタとやって来てから凄い情報掴んだと言った。
「凄い情報?」
「あのバスケの強い青峰がチームメイトと付き合ってんだって!しかも、別の相手から奪ったらしいぜ」
「略奪愛ですか」
「…昨日見たっスよ」
「あぁ、そういやお前幼馴染だっけ」
けど広がるの早いな、なんて言いながら火神っちは持ってきたバスケの雑誌を広げる。因みに最新号である。火神っちの親はバスケ雑誌の編集者らしくて店頭に並ぶとそれをくれるらしい。後で二人で見せてもらおうと昼休みバスケしないっスかと二人に声をかけたのだった。
+++
くるくるとボールを回しながら昨日の事を思い出す。チームメイトが泣きながらに助けを求めてきたのはあれがはじめてだった。チームメイトの桜井は、割と付き合いの良い奴だ。いつも謝ってばかりのが残念な所だが。彼奴が男同士の恋人がいるというのも、相手が同じ部内の関係者であるのは割と前に知っていた。最初は驚いたけど、別に奴がおかしい訳じゃないし、好きになった奴が偶々男同士だったのだろうと思っていた。それに、仲の良い感じだったから何も言わなかった。それが昨日の帰りに急変した。泣きながらに助けて下さい、と言ったのだ。桜井が泣くのは初めてだった。
「どうかしたのかよ、良」
「…僕が今吉さんと付き合ってるのは御存知ですよね」
今吉というのはチームメイトの一人だ。細目の人をからかうのが好きな苦手なタイプだ。だが、それは部の空気を和らげる為のものであっていつもな訳じゃない。そいつと付き合っているのは知っていた。
「あぁ。」
「見て欲しいんです、これ」
部室の中で着ている服を脱いでいく桜井の体は思ったより華奢で白かった。その身体には見えない様な所に赤黒く変色している部分が幾つもあった。消えかかっている場所に更に痣が重なっているのもある。バスケの練習で出来たものではない。特に酷いのは下腹部だ。白い肌が見える範囲が少ないのではないかという程に痣だらけだ。まさか、と彼を見ると彼は服を身に付ける。
「…痛いんです。好きな筈なのに一緒にいるのが怖いんです」
でも頼れるのは青峰さんくらいで、だからと涙ながらに言う桜井を抱きしめた。暫くの間、奴が諦めるまで形式的に付き合う事にしたのは、少なからず桜井が大切だからだと思う。屋上で弁当を食べながら横で弁当を食べる桜井を見ながら思う。桜井の弁当を見ると色取り取りで旨そうだった。視線を感じたらしい桜井恥ずかしそうに僕が作ってるんですと告げた。へぇ、すげーじゃんと言えば嬉しかったのか桜井が笑った。綺麗な笑顔だった。お前はやっぱり今吉なんかには勿体無いぜ、と言えば少しだけ驚いた桜井は照れた様にありがとうございますと言った。その日の内にどうやら自分と桜井がそうゆう関係になった事は部内に広まっていた。噂はたいして気にしないけれど早まる早さに驚くばかりだった。部活の空気も、殆ど変わらない。あの今吉はいつもと変わらない。けれど、少しだけ桜井を見る目が鋭い位で、厄介な頼まれごとを受けたんだなと今更に後悔した。後悔した所でもう取り返しはつかないが。そう思いながら、二人で歩く帰り途、ありがとうと何度も繰り返す彼が儚くて気付けば彼にキスをしていた。それは、ちょっとした好奇心だったのだ。男にしては柔らかな感触の唇が酷く劣情を誘った。その時に何かの音がして見れば其処には幼馴染の涼太が琥珀の瞳をこれでもかと大きく見開いていた。
「あ、追い掛けて下さい!」
どうしようかという時に、彼はそう叫んだ。誤解されたままは良くないですからと彼はそのまま足速にその場を離れていく。気配りの出来る桜井らしい行動だった。
誤解を解くにもどうやら涼太は完全に恋人だと認識している様だった。しかも、驚いた事に彼はそういった趣向の事を理解していたし、宿題あるからなんて部屋から追い出すのだから何も言えなかった。中学生でホモの事を理解しているなんて、とそこで一つの言葉が浮かび上がるがすぐに打ち消した。そして、翌日に公園のコートで珍しい人物に会うことになった。休日は、そこは沢山の学生やら社会人やらで溢れかえる。と言っても渋滞とかではないのだが。其処にいたのは、涼太のクラスメイトである黒子テツヤという少年だった。空色の髪にガラス玉みたいな目が印象的な少年だったのを覚えていた。何度か涼太達ともバスケをしていたので覚えている。けれど自分からは行動したり話したりということはしない控え目な奴だから彼だけというのが少しだけ驚いた。
「…一応、確認しておきたいと思いまして。」
「?何をだ?」
「青峰さんは、黄瀬君の事を兄弟以上の感情を抱いた事はないんですか?桜井さんを本当に好きなんですか?」
どきりとした。こんな事を何回か会った位の奴に聞かれるなんて思わなかった。けど、今更、どうにも出来ない。白状すれば確かに涼太の事は兄弟以上に好きだ。好きだが、どうしようもない。言えば奴は驚くだろうし離れるだろう。だから今まで言わないでただの隣の住人をやってきた。そのままでも良いと思っていたから。
「桜井は、大切な奴だ」
「そうですか。ありがとうございます」
ぺこりと一礼をした彼はその場から消えた。よく分からない奴だと思いながらバスケをする為にボールを掴んだ。
+++
休日は、のんびりしていたい。それは会社の人も学生だって変わらない望みだろう。そう思いながらベッドでゴロゴロしていると机に置いてあった携帯が振動して着信を知らせた。短いので恐らくはメールだろうと、携帯を手繰り寄せて見るとそれは、黒子っちだった。彼は殆どメールの返信をしない人だから、どうかしたのだろうかと思った。内容は、家にお邪魔しても良いですかという断りのメールで別に何もないので良いとメールをしてから親にお菓子の準備をしてから部屋に戻る。来る頃には親は少しいなくなるけれど、男友達に其処まで気を使わなくても良いかなと思い直す。そうこうしている間に呼び鈴が鳴って黒子っちが入って来る。どうかしたんすか、と言えば彼はいつもとは違ってぎゅうと抱きついて来た。
「はは、どうかしたんスか。いつもと逆っスよ」
「…青峰さんと桜井さんは本当にお付き合いされてるんですね。」
「?どうかしたんスか?」
その話題はまだ辛いから出さないで欲しい。そう言ったって黒子っちが気が付く道理は無いのだけど。
「けど、僕は貴方に伝えたいんです。黄瀬君。僕は貴方が好きなんです。」
意味、貴方なら分かる筈です、と言われて自分が大輝くんをそうゆう目で見ていたのを知られていたのにも気付かされた。敏い彼なら気づくかもしれない。
「そっか…気付いてたんだ、黒子っち…ごめんね、気持ち悪いっすよね」
俯いているとぎゅうと肩を抱き寄せられた。それはいつもの彼らしくない行動で驚いていると彼は僕はそれでも黄瀬君が好きなんですと、そっと額に唇を押し当てたのだった。どくりと鼓動が跳ね上がった。今直ぐなんて言わないです。けれど、そばにいる事を許可してくれませんか。そう言う黒子っちの目は真剣で縦に降るしか無かった。それに男が好きなのは僕だって同じですから、だからそんなに悲しまないでください。そう言われて少しだけ気持ちが軽くなった気がした。
高校受験も本当は大輝くんのいる高校と思っていたけれど、やはりまだ傷心の自分には辛くて近くの別の高校へと希望して其処へ向かう事になった。本当はもっとレベルの高い高校にも入れるのに黒子っちは同じ高校へしてくれたのはきっと自分が行くからだろうと思った。
桜の舞う季節に卒業式。情緒もあるけれど男の自分としては少し花粉症で鼻が辛くなる季節という感覚でしかない。いつも二人で座っていたベンチで腰掛けて無言になる。
「…黄瀬くん、話があったんでしょう」
「はは、黒子っち鋭いっスね」
「そりゃ、僕は貴方をずっと見て来たので」
そう言う彼は桜に囲まれて少しだけ頬が紅潮していた様な気がした。
「俺、やっぱり黒子っちのこと好きかもしれない」
だから、一緒にまたバスケして欲しいっスと言えば彼はそんなの当たり前でしょうと、そっと優しく唇を押し充ててきたのだった。それが恋人の初めてのキスだった。
はじまりのはじまり
END
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