※テニス
※そこはかとなく腐のかほりあり
※西のゴンタクレルーキーが愛されてます
※九州弁全く調べてないからごっちゃまぜ。
今日も今日とて青春学園中等部テニス部はいつも通りにぎやかだった。テニスラケットを握れば人格が変わってしまう河村、お互いを牽制し合う二年の桃城と海堂。アクロバティックが得意の菊丸と大石の黄金ペアもなんだかんだと言い合う。其処へどたどたと騒がしく入って来たのは、赤い髪の毛とヒョウ柄がトレードマークの遠山金太郎。
「よお、金太郎。また越前に用事か?」
「そやで!ワイ、コシマエと試合する為に走って来たんやで!」
夏休み、この夏休みを利用して彼は何回となくテニス部にやってくる。まるで猪突猛進なイノシシのようだ。そのお陰か最初は警戒心ばかりの部員も今ではにこやかに迎え入れる始末。最も、彼も試合さえ出来れば害のない少年であるので彼らが警戒心を解くのも無理はないだろう。その分、越前が彼を相手する手間が増える訳で。彼が来ると越前は決まって彼が見つけにくい場所を探すようになった。上手く逃げていれば、彼の同じ部活である部員が捕まえに来るのだ。合宿中の宿から彼の姿が無いと成れば行く場所は大凡此処だろうともう的を絞っているようだった。
彼はどうやらただ今の合宿中(しかも東京都内)の宿から抜け出していたらしい。いつもの時間に現れない事に不信感を抱いた部長である白石が彼の泊まっている部屋を見れば其処にはもぬけの空だったという訳で、(ちなみに彼が到着する数分前に手塚部長宛に電話連絡があったりしたのは最早日常茶飯事である)そうしているうちに今日は部長ではなく九州ニ翼の一人千歳千里が苦笑いしながら迎えに来たんよ、とからんころんとスニーカーでなく下駄を鳴らしてやってくる。
「、ああ、千歳君。遠山金太郎ならコートにいるよ」
「ほんに、悪かったたい。」
「そう思うなら手綱でも握ってればいいだろ」
「海堂、それじゃ犬だよ」
その言葉に千歳は笑いながら、そんなもんじゃ意味はなかと。金ちゃんは試合する為なら鍵でも鎖でも弊害は破壊してでも行くっちゅーことは想像に簡単ばい。だから、こうしていなくなると四天宝寺の奴らが此処に来る。何言っても聞かんから。と言いながら、相手をしているのだろう、手塚とのコートへ向かう。夕日が差し込んで辺りが黄色に染まる。それを見ていたらしい越前もひょっこりと倉庫から顔を出す。
「まだいたんだ…本当にあきらめ悪いよね」
「リョーマ君…其処にいたの?」
「まーね。彼奴とやると疲れるし」
彼奴無駄に元気じゃん、と彼のトレードマークである帽子をくるくると回しながら腕を回す。ずっと同じ姿勢でいた所為か凝っていた。後でマッサージしなくちゃいけないな、と二人の試合を見ながら思う。
と、遠山側がぐるりと回転を始める。あの危ない技を繰り出そうとしている。それにはさすがにまずいんじゃねーのかと桃城が叫ぶ。すると傍観していたらしい千歳が「金太郎」とゆっくりと呼ぶとそれはぴたりと止まる。あの男も怒らせると怖いのだろうかと見ていると、驚いた拍子に転んだのか、彼の膝や肘が血が出ていた。
「あーあ、やってもうた〜」
「ほんなら、戻るばい。金ちゃんの消毒もせんといかんし」
「消毒ならうちでやっていくかい?」
「いんや、よかばい。その後たっぷり説教コースとなると合宿中の宿の方が何かと都合もよかとよ。」
ひょいと、慣れた動きで彼を背中におぶり歩き出す。それはおんぶされる子供と親そのもので、微笑ましいのだけど。ちょっと甘やかしすぎじゃないのかとじろりと彼を見てると彼が着ていたジャージが風に揺らめいて彼の腰が見えた。それは別段可笑しい事ではないし、自分だって試合中風で腹が見えるのもあるのだけど、見えるそれは明らかに故意に出来たものだろうものがあった。試合をして満足したのかうとうとしている彼と、それをおんぶしながら歩く、彼に越前は疑問を感じて、声をかけていた。
「ねぇ、あんた」
「ん、俺の事か?」
「其れ以外にいないでしょ。そいつは寝てるし。あんた、そいつに甘やかしすぎじゃないの」
中学生なんだから一人で歩かせたら。そいつ、その位の怪我なんてことないでしょ、と言えば千歳は少し思案顔をしてん〜と言いながらぐい、と屈む。きっと身長の低い自分に聞こえる様にだろう。それは非常に屈辱的でいらっとした顔を向ける。
「昨日ちぃとばかし、俺が無理させたばい、これ位せんと。」
にっこり笑いながらひょいと歩き出した、二人(ひとりは寝てておんぶ)からは同じ匂いがした。ぽんと、置かれた手を見上げると其処にはいつも笑顔の不二がいた。
「越前、何か言われたのかい」
「甘やかしすぎって言ったら、昨日無理させたからって。訳分からないっす」
そう言うと、ああ、そういう事か。にっこり笑った不二が越前に二人の秘密のこと、だから黙ってるしかないんじゃないのかなと言って引き上げる様子を見て益々首を傾げたのだった。
「越前に見られてしまったかもしれんばいね〜」
ぽつりと呟く千歳の声に反応する人は誰もいない。
END
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